「世界最速の航空機」には“そっくりすぎる弟機”がいた! こちらも爆速…でもなぜ開発?
「世界最速のジェット機」としても知られているアメリカの超音速偵察機SR-71。それに加え、実はまるで“ミニSR-71” とでも呼べるような、無人偵察機もかつて開発されました。なぜでしょうか。
なぜ無人機を作ったのか
アメリカは既にマッハ3を超える偵察機を使っていたのに、なぜD-21までもつくったのでしょうか。背景にはパイロットをできる限り危険にさらさない考えがあったのは確かです。
偵察機は対象とする国の領空に侵入すれば撃墜されるのは確実です。米ソの冷戦が白熱した1950年代は国境付近を飛んでいても攻撃されたことがあり、日本の北海道沖などでも信号情報傍受用のアメリカ軍偵察機が旧ソ連に撃墜されています。1960年5月には世界を驚かせたU-2偵察機撃墜事件が起き、台湾から発進したほかのU-2が中国国内で撃墜されてもいます。
SR-71が任務に就いて以降も撃ち墜とされない保証はいつまであるのか、運用者や設計者は常にこうした不安に脅かされていました。そのために中国の奥深くの実験場へ飛ばす偵察機は、超音速無人機を選んだのです。
とはいえD-21は成功したとはいえず、生産数のすべてを使い切ることはありませんでした。残ったD-21は現在、米国内の博物館で展示されています。昨今の無人偵察機と言えば、米国のRQ-4など細長い直線の主翼を持った機体を主に思い出します。しかし、それらと異なる黒く鋭い外形のD-21は今見ても、スパイ機と言われれば十分に頷くほどの迫力があります。
Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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