日本政府が導入するアメリカの「国民車」とは? 「使う職員がかわいそう」 関税交渉の“ややこしい条件”がコレか
日米関税交渉の一環で、日本政府がアメリカ製ピックアップトラックの購入を検討していることが明らかになりました。しかし自動車業界関係者は、車体の大きさや燃費、メンテナンス体制などから「日本で運転するのには極めて不向き」と指摘します。
アメリカで一番売れている車「でした」
フォードのF-150は、1948年に発売された「Fシリーズ」を源流としています。モデルチェンジを繰り返して現在は2020年に発売された14代目で、アメリカでのモデル別新車販売台数で23年まで47年連続で新車販売台数首位だった「国民車」です。筆者が2020~24年に勤務先のワシントン支局に駐在中には「歴代のF-150に乗ってきた」というヘビーユーザーにも出会いました。

ところが、調査会社ジャトダイナミクスによると、不動の人気を誇ったはずのF-150の2024年の新車販売台数は前年比5%減の46万915台と2位になり、首位から陥落しました。代わりに首位の座に就いたのがトヨタ自動車の主力SUV「RAV4」で、9%増の47万5193台となりました。
RAV4はアメリカのSUVで8年連続首位となった人気車で、ともに燃費性能が優れたハイブリッド車(HV)モデルが29.3%増、プラグインハイブリッド車(PHEV)モデルも19.3%増と大きく伸びたのが躍進を支えました。
他方でF-150にとって不利になったのが、1998年に売り出した99年型モデルからより大型のF-250、F-350が独立したことです。それまではFシリーズとして販売台数が集計されていましたが、99年型からは別のモデルとしてカウントされるようになりました。
ただ、「アメリカ人は他国にナンバーワンを奪われるのをことさら嫌う」(アメリカに30年以上住む日本人)という傾向があり、トランプ氏の「アメリカ第一」主義もそれを鮮明に映し出しています。自動車業界には、1970年代の石油危機を受けて燃費性能が優れた日本車がアメリカの自動車市場を席巻し、逆上したアメリカ国民が腹いせにトヨタの乗用車「カローラ」をハンマーでたたき壊すイベントが開催されるなどの「苦い記憶」があります。
トヨタは「ハンマーヘッド」と呼ばれる独特の形状の前照灯を採用した新型RAV4は、HVモデルとPHEVモデルに特化します。販売台数が多いガソリンエンジンだけを搭載したモデルを廃止するため、アメリカの自動車業界関係者は「RAV4の現行モデルの駆け込み需要がある2025年はトップを維持するかもしれないが、26年はF-150が首位を奪還するのではないか」との見方を示します。
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