日本参入する英国「超リアル鉄道ゲーム」開発責任者の“鉄道史観” ただ新作は「地下鉄レースゲーム」!?

鉄道運行シミュレーションゲーム『Train Sim World6』の開発責任者が単独インタビューに応じました。今後、「超リアル」な鉄道ゲームは別機軸での活路も狙いつつ、あわせて全く別次元の「ゲームらしいゲーム」も展開するといいます。どのような意図があるのでしょうか。

新機軸の「ゲームらしいゲーム」

 こうしたリアルさの追求から一転、同社は、2026年に今までにない新しい鉄道ゲーム、『Metro Rivals』を発売すると発表しました。

 同ゲームではロールプレイングの要素もありつつ、複数のゲーマーがオンラインで同時に地下鉄の列車を運転して、その速さを競う対戦プレイの機能もあると言います。現実世界では絶対にあり得ない、あってはならない「地下鉄のレース」へとファンを誘うわけです。

「もっとゲームっぽい要素やストーリー性を取り入れて欲しいというファンの要望に答えたかった」と説明する開発責任者のペドルスデン氏。インタビューを通じて見えてきたのは「仲間で遊ぶ楽しみ」を追求する心でした。

 ペドルスデン氏が鉄道ゲームに出会ったのは、2001年にイギリスのゲーム会社から発売された『マイクロソフト・トレイン・シミュレータ』だったそうです。「即座に鉄道ゲーム用のウェブサイトを立ち上げ、それが情報交換のためのコミュニティのような場になっていった」と回顧しました。「かつて同サイトで一緒に遊んでいた仲間の多くが、今日の鉄道ゲームの開発を牽引(けんいん)する存在になっている」そうです。

 同ゲームや、1997年に発売された日本の『電車でGO!』は、家庭用列車運行ゲームの黎明期を飾った代表的なゲームといえます。そして、この時代は、インターネットが爆発的に普及した時代でもありました。

「もしインターネットが存在しなかったら、あるいはインターネットがそれほど面白くなかったら、間違いなく鉄道シミュレーションは今日のようなものにはならなかった」と同氏は断言します。

 同氏が興奮しながら回想した当時の話からは、インターネットの普及でネットコミュニティが拡大していくのとともに、草の根レベルで鉄道ゲームが成長していった様子がありありと伝わってきました。そんな同氏だからこそ、インターネットがここまで進化した時代に合わせ、オンラインで仲間とワイワイと遊べる鉄道ゲームが欲しかったのかもしれません。

 今までの鉄道ゲームはどれも、基本的には一人で遊んで楽しむゲームでした。ところが、そのような一人用のゲームでも「ネット掲示板などでゲームの進捗状況を自慢しあったり、運転技術をYouTubeで披露したり、結局、プレイヤー同士でお互いに競い合っている」と同氏は指摘します。「それなら、友達とオンラインで対戦プレイすればいい」というわけです。

 調子に乗った筆者は、日本の誇りである新幹線0系(1964年デビュー・世界初200km/h超の営業運転)と、英国の誇りである世界最速の蒸気機関車マラード(1963年引退・最速記録203km/h)という、たった一年の差ですれ違うように交替した鉄道の新旧エースのレースはいかがですかと提案してみました。

「面白い」と大笑いしてくれた同氏でしたが、そんな夢のレースに興じられる日は来るのでしょうか。今後も同社の開発チームの動向から目が離せません。

【超リアルだけど非現実】新作『Metro Rivals』のスクリーンショット(画像)

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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