バブル絶頂期に描かれた「未来鉄道」は実現したのか “狂気の大風呂敷”の答え合わせ

東京の膨張がいつまでも続くと信じられていたバブルの時代に書かれた「21世紀の東京圏の鉄道交通」とは、どのようなものだったのでしょうか。後に実現したものから夢に終わったものまで、当時の論文に記された様々な提言を振り返ります。

通勤ラッシュを見た外国人の反応が忘れられず

 この論文、一執筆者の未来予想と切り捨てられないのは、車両製造から電気設備まで幅広く鉄道事業を展開する日立製作所のシステム事業部輸送システム部長だった安藤正博氏が執筆したものだからです。

 安藤氏は戦後の約45年間で「衣」と「食」は欧米先進国と比較しても質・量ともに遜色ないレベルに向上したが、「住」、特に大都市圏での鉄道交通は「欧米先進国の通勤時の混雑レベルと比べて遙かに及ばない」と指摘します。

 安藤氏は1986(昭和61)年にカナダで開催された世界交通博覧会で、日本の通勤ラッシュの映像展示を見た先進国の見学者が、驚いた顔をすると同時に、くすくすと笑って立ち去る状態が忘れられないと述べます。

 日本人もこれで良いと思っていたわけではありません。1990年度「国民生活白書」の「国民の社会資本への不満度」には、幹線道路の渋滞が50%で1位、続く2位が「大都市圏のJR、私鉄・地下鉄の混雑」の約30%でした。「日本の表玄関である東京圏の鉄道交通問題を解決してこそ、東京は世界に恥ずかしくない国際都市になる」というのが安藤氏の問題意識でした。量から質へ、ゆとりの時代へ、これはバブル崩壊後も一貫して続いた時代の要請でした。

 1990年頃の東京圏の混雑率は平均200%で、路線によっては250%を超えていました。混雑は以前から問題になっていましたが、バブル景気で長距離通勤者が増加し、下落傾向だった混雑率が増加に転じた時期でした。鉄道輸送力の増強が求められた反面、地価の高騰で用地取得が困難となり、新線建設が停滞した時代です。

 最初の提案は「大深度地下鉄による輸送力の増強」です。駅間距離5km程度の急行路線として表定速度を40~50km/h台にアップ。これを既設路線の地下深くに敷設しようというもので、西武鉄道が1987年に発表した新宿線地下複々線化計画にも通じる発想です。安藤氏は具体化しつつあった常磐新線(つくばエクスプレス)の秋葉原~北千住間に言及していますが、実際にはほぼ通常の地下鉄と変わらない形となりました。

【今は無理?】バブルの頃に生まれた豪華列車(写真)

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