バブル絶頂期に描かれた「未来鉄道」は実現したのか “狂気の大風呂敷”の答え合わせ

東京の膨張がいつまでも続くと信じられていたバブルの時代に書かれた「21世紀の東京圏の鉄道交通」とは、どのようなものだったのでしょうか。後に実現したものから夢に終わったものまで、当時の論文に記された様々な提言を振り返ります。

「第2」「第3」の提案、そして24時間運行…実現したのは?

 第2がリニアメトロの敷設です。安藤氏はリニアメトロの研究開発でプロジェクトリーダーを務めており、論文の発表直後には東京初の路線として「都営12号線(大江戸線)」光が丘~練馬間が開業しています。急勾配、急曲線の路線計画が可能で、建設費も安いリニアメトロで山手線と武蔵野線の間にもう一つの環状線(メトロセブン、エイトライナー)を建設する提案です。

 第3がモノレールの活用です。東京モノレール以降、日本の主流となっているのが「日立アルウェーグ式」であるように、日本のモノレール技術を牽引(けんいん)してきたのが日立です。

 安藤氏はモノレールの新たな活用方法として、大深度地下鉄と反対に既設路線の上空に敷設してはどうかと提案します。また、モノレールは各駅停車、既設鉄道線は2階建て車両を複数連結した快速として、着席サービスも拡大します。

 これらをあわせて、JR東日本の総武、常磐、東北、中央、東海道の5路線直下の大深度地下鉄建設が約5兆円。リニアメトロの環状線が1.5兆円、大手私鉄各線に併設するモノレール建設が約4.5兆円、合計約11兆円と試算。民間の資金では不可能なので、第3セクター設立や国の補助など公的な支援が必要と記しています。現代のプロジェクトと比較すると、リニア中央新幹線東京~名古屋間の建設費が約7兆円なので、文字通りケタ違いの構想でした。

 もう一つ提言しているのは、「世界の中心となる国際都市東京」にふさわしい24時間運行です。ニューヨークは複々線を活用して24時間運行を実現していますが、前述の大深度地下鉄、リニアメトロ、モノレールを複々線として活用すれば、同様のサービスが可能というのです。24時間運行はバブル崩壊後もたびたび議論されましたが、コロナ禍以降は終電繰り上げが進むのが現実です。

 重ねて記しますが、これはあくまでも安藤氏が個人として投稿した論文であり、日立の公式見解ではありませんが、交通業界がどのようにバブル景気に向き合ったのかを示す貴重な資料といえるでしょう。

【今は無理?】バブルの頃に生まれた豪華列車(写真)

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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