「世界的ベストセラー軍用機」がまさかの進化! レトロ機にハイテク融合で生まれた「悪魔の兵器」とは?

第二次世界大戦直後に生まれた傑作小型輸送機のアントーノフAn-2。コスパ良し・性能ヨシ・操縦しやすいの三拍子そろっていたことから、各国で多数が使われています。そんなベストセラー機をドローンに改造する動きが出ています。

中国で無人輸送機へ転用中

 この旧型機のドローン化と飽和、誘引の組み合わせという戦術において、現在注目されているのが中国軍の動向です。

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農薬散布で畑の上を低空飛行する東ドイツ時代のAn-2(画像:ドイツ国立公文書館)。

 中国は1950年代にAn-2を国産化し、Y-5輸送機の名前で量産しました。農薬散布や連絡輸送、空挺降下訓練などで長らく使っており、いまだ民間と軍で約500機が現役であると言われています。

 また、現在ではY-5を無人化した大型貨物UAVであるFB-98や、その軍用バージョンのY-5Uが開発されています。どちらも公には「大型無人物流機としての実証段階」あるいは「限定運用の検証機」と説明されています。

 台湾有事に際しては、アゼルバイジャンの成功例を踏襲するのは難しいでしょう。しかし上陸部隊や空挺部隊の橋頭保に対する低コスト、低リスクの補給機といった使われ方が考えられますし、An-2以外の旧型戦闘機や攻撃機も加えた多機種のドローン・フリートで台湾の防空網を麻痺させる戦術も視野に入るでしょう。

 アントーノフAn-2は、大空へのロマンと郷愁をかき立てるレトロな大型複葉機です。しかし、そのコストの低さと、安定性の高い飛行特性、世界中どこでも手に入る普及率の高さ、技術的には枯れた飛行機という点から、現代において軍用機として用いられた場合、最新鋭機とは別の意味で「恐ろしい存在になりかねない」そんな一面も持ち合わせているのです。

【鼻っ面が変わった!】性能上がったのに売れなかった「改良型An-2」です(写真)

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

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