日本初のジェット輸送機 いまだ語り草の“ビックリ性能”はどう実現した? 空自パイロットの評価は

今から52年前の1973年11月12日、国産初のジェット輸送機C-1が初飛行しました。30機以上生産され、長らく日本の空を飛んできましたが、2025年3月に全機退役しています。改めて振り返ってみましょう。

入間航空祭の名物だった国産輸送機の“驚がく”飛行

 11月12日は、国産初のジェット輸送機であるC-1が初飛行した日です。

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2024年の入間航空祭で飛行展示を行なうC-1輸送機(布留川 司撮影)。。

 初飛行したのは半世紀以上前の1973(昭和48)年で、当時の技術研究本部(現在の防衛装備庁)および日本航空機製造が開発し、生産は川崎重工業が主契約企業として担当しました。C-1は31機が生産され、航空自衛隊で半世紀以上にわたって活躍していましたが、機体の老朽化と後継機のC-2の配備によって今年(2025年)3月14日に全機退役しています。

 C-1は、退役するまでは入間基地で毎年開催されている「入間航空祭」で飛行展示を行っており、時折見せる戦闘機のようなアクロバティックな飛び方は航空祭の名物にもなっていました。

 もともと、輸送機のような大型機は主翼面積が広く、デモンストレーションでは貨物を搭載しない空荷状態で飛行するため、その飛び方は派手になります。民間旅客機でもボーイング社やエアバス社の機体は、海外の展示会などで顧客へのアピールのために急激な上昇や旋回を繰り返して行い会場を沸かせます。しかし、C-1の場合は、それらを凌駕するような旋回飛行や、機体を大きく傾けた旋回飛行も行っていました。

 C-1は軍用機であり、通常の旅客機にはない特別な設計が盛り込まれていました。そのひとつがSTOL(短距離離着陸)性能です。日本は国土が狭く滑走路が短い空港が多いため、そういった場所での運用を考慮し、短距離でも発着できる性能が盛り込まれました。その結果、最短離陸距離460m、最短着陸滑走距離600mという驚異的なSTOL性を獲得しています。

 このSTOL性を実現したことで、結果的に低速での揚力維持・旋回性能に優れる構造となりました。

 また、操縦装置は現在の航空機では当たり前となったコンピューター制御のフライ・バイ・ワイヤではなく、操縦桿の動きで可動翼が動くメカニカル操縦系統でした。これにより、パイロットはその操縦桿の反応(舵感)で機体の動きを感じ取ることができたともいわれています。

 これに、半世紀以上もの長い運用によって培われた操縦ノウハウが組み合わさって、あのような派手な飛行展示が安全に実施することができたのです。

【写真】これが「不死鳥」と呼ばれたC-1です

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