中国製旅客機“お試し採用”のLCC「半年で返します~」→なぜ? 成功例もある売り込みスタイルも頓挫のワケ

ベトナムのLCCにリース導入された中国の旅客機が、わずか半年で同航空会社での運航が終了しました。どういった背景が考えられるのでしょうか。

「やっぱ半年で機体返します」その背景って?

 今回のベトジェットでのリースをA300と比べた場合、真っ先に気づくのがC909は、アメリカのFAA(連邦航空局)の型式証明を受けていないことです。もちろんFAAの認可を受けずとも、運航国が許可すれば国内運航は可能なものの、FAAの認可は世界の航空界で「標準」とされ安全の基準にもなっています。この認可がないうえに運航費が折り合わなければ、ベトジェットはリース契約の更新へ及び腰になったのは容易に想像できます。

 2つ目は「新製品」だったか否かでした。エアバスがアメリカでリースしたA300は当時の新鋭機でした。しかし、C909は実質アメリカのMD-80シリーズのコピーとされるのに加えて、MD-80シリーズ自体が既につくられていない旧式機です。C909は同じクラスのブラジルのエンブラエルほどに運航費を抑えることができなかったと考えられます。

 3つ目は、技術的成熟度の違いです。欧州はA300以前もイギリスやフランスでカラベルやBAC111などの旅客機をつくり、超音速旅客機「コンコルド」も手掛けました。中国もY-7プロペラ旅客機などが既にありましたが旅客機開発技術の経験値に圧倒的な差がありました。この技術力の差が当時のA300と今回のC909に現れたとも考えられます。

 ただし、今回のリース終了が、中国とCOMACにとって深手にまで至る傷だったとまでは言えないでしょう。そもそも古い機体を、コスト削減を重視するLCCへリースした時点で結果は見えていたと言えます。その結果が予測通りだったか、それとも予測外の要因があったか――。COMACは分析してC909の次のリース、或いはより新しいC919のリースに反映してくるでしょう。それだけに、COMACが次にどんな手を使うのかが注視されるべき内容です。

【写真】おいセクシーすぎだろ…これがベトジェットがやってた「機内水着ショー」驚愕の全貌です

Writer:

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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