AIで航空機整備に「大きな変革」が!? そこで欠かせない”重要な視点”とは 米大手企業が日本に提案するソリューションをトップに独占取材(後編)
昨今、幅広い分野で注目されている人工知能(AI)。じつは、アメリカでは航空機整備の現場にAIを導入し、作業の効率化を図っているといいます。そんな先進的な取り組みを日本にも提案する米大手企業の幹部に、直接取材しました。
注目を集める無人航空機 有人機との「大きな違い」とは
近年導入が進められているものといえばもう一つ、無人航空機(UAV)が挙げられます。ウクライナ戦争以降、日本を含めた各国で導入が急速に進められている無人航空機ですが、そのプラットフォームと部隊維持の双方において有人機とは大きな違いがあるとダナウェイ氏は説明します。
「ウクライナ戦争の影響もあり、近年ではFPV(First Person View)型の小型無人機が爆発的に普及しています。そのため、無人機と一口に言っても、FPVドローンのような手のひらサイズのものから、高高度を高速で飛行可能な高性能なものまで幅が非常に広い。単純な比較はできませんが、無人システムが大型化し、技術的にも高度化していくほど、整備や維持の面では有人機との共通点が増していきます。
双方とも有人介入が必要ですが、当然大きな違いも存在します。有人機では、整備の対象は主に機体そのもの、搭載システム、動的部品、航空機の構造健全性などに限られます。しかし無人システムの場合は、機体のサイズや構造にかかわらず、プラットフォームだけでなく、管制ステーション、データリンク、通信ネットワークなど一連のシステム全体を維持する必要があるのです。つまり『プラットフォームそのもの』だけでなく、『それを飛ばすための環境全体』を維持することが求められるのです。
したがって、機体単体ではなくシステム全体の維持整備(System-level Sustainment)という考え方が不可欠になります。これが有人機との最も大きな違いです」
システム全体の維持が不可欠となると、気になるのはサイバーセキュリティです。UAVを含めた無人アセットの運用システムがサイバー攻撃を受ければ、通信システムがダウンしたり、あるいは運用システムを乗っ取られたりする危険性があります。じつは、アメンタムは航空機整備のみならず、サイバーセキュリティ分野でも存在感を示している企業です。そこで、無人アセットの維持整備とサイバーセキュリティの関係について、ダナウェイ氏に伺いました。
「おっしゃるように、今後はサイバーセキュリティを含めた多面的な要素が無人システム運用に絡んできます。たとえば、戦闘ヘリコプターのAH-64やF-16戦闘機を飛ばす際、サイバーセキュリティの関与は限定的です。というのも、これらは基本的に人が乗り込んで操縦し、自律的な運用が可能な『自己完結型(self-contained)』のシステムであり、外部からの干渉といえば電磁妨害(EMI:Electro-Magnetic Interference)程度だからです。
しかし、無人アセットの場合、事情は大きく変わります。通信リンクや制御ネットワークに依存する無人プラットフォームは、サイバー攻撃の脅威に常時さらされることになります。したがって、AIとサイバー、両者を包括的に扱える企業こそが、この分野で優位に立つでしょう。そして、多層的な事業基盤を持つ当社は、すでにこれに対応可能な態勢を有しています」
今後、日本の自衛隊においても無人アセットの導入が続々と予定されていますが、単にモノを導入するだけではなく、それをどのように維持し、どのように効率的に運用していくのかという視点も必要です。そこで、アメンタムが提供する各種ソリューションが、日本においても重要になっていくと、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は思います。
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。





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