「国鉄形電車もこれが最後か」と思わずにはいられないツアーに参加 「あれはドナドナされた車両たち…」 本当に“伏線”となるのか?

懐かしい国鉄形電車を貸し切り運行するツアーが開催され、大勢の鉄道ファンが集まりました。同行すると、事前には告知されていなかった「これで最後」の演出が次々と繰り出されました。

ファンサがスゴいのよ!

 えちごトキめき鉄道の455・413系は妙高はねうまラインの単線を進むため、隣の関山(妙高市)では妙高高原行き普通電車との行き違いのために21分停車。その間に実施された側面表示器の幕回しでは「名古屋」や「博多」、さらには鹿児島中央に改称済みの「西鹿児島」も出現しました。

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JR東日本長野総合車両センターに停車中の(手前右から)DD51形、DD16形、DE10形。奥は電気機関車EF65形(大塚圭一郎撮影)

 国鉄形電車らしい上下開閉式の二段窓を開けて走行音を楽しみながら車窓をのぞくと、妙高山(2454m)などの妙高連峰が冠雪しているのを望むことができ、旅情をかき立てました。

 新井(妙高市)で20分間停車後、列車は終点の高田(上越市)まで止まりません。途中には北陸新幹線と接続する上越妙高(上越市)があり、通過時には車内放送で「上越妙高は特急列車を含めまして旅客列車は全て停車していますが、この列車は通過します」と案内がありました。団体列車ならではの貴重な体験です。

 高田の3番線に到着後、折り返しまで1時間弱あります。この間にえちごトキめき鉄道の鉄道グッズ販売コーナーには参加者の長蛇の列ができていました。筆者も5000円近く購入しましたが、もっと上を行く「大人買い」が相次ぎ、最初は山積みだった商品がほぼ売り切れました。

長野総合車両センターの隣を通過 その場所は…

 折り返しの455・413系は、「現行の交直流急行色で妙高高原に乗り入れる最後の機会になった」とえちごトキめき鉄道の関係者が打ち明けました。「新北陸色」に塗り替える前の2026年1月12日までの期間中に、妙高高原への乗り入れは予定されていないためです。

 理由として新井―妙高高原間には急勾配がある上に、冬季は積雪で線路が滑りやすくなる中で「413系は(設定した速度を維持するための)抑速ブレーキがないので坂を下るのが難しい」ためだと説明しました。

 よって、妙高高原2番線に入ったしなの鉄道115系の湘南色との並びは、455・413系の現行塗色では「最後」となりました。ただし、この時に455・413系が入線したのは同じホームの対面の3番線のため、すぐ隣で並んだのは往路が「最後」だったのです。

 復路のしなの鉄道115系湘南色は終点の長野の近くで、車両の解体を手がけるJR東日本長野総合車両センター(長野市)の隣を通りました。ディーゼル機関車のDD51形とDD16形、DE10形、電気機関車EF65形、特急形電車189系の「あさま」色などが並ぶ中で「電車の速度を落として運転して参ります」とのサービスも用意されていました。

 ただ、“廃車予備軍”の姿は、乗っていた115系にとっても他人事ではありません。しなの鉄道は2028年までに115系を全て引退させる計画だからです。

 一方、えちごトキめき鉄道の455・413系についても「次の全般検査は通さずに退役させるのではないか」(事情通)との見方が出ています。

 根強い人気のある国鉄形車両が消えていくことに惜別の念を禁じ得ません。その一方で「ドナドナ」を控えた車両に別れを告げる旅行商品が今後も企画される予定で、添乗した山中さんのような鉄道愛好家の心理をよく知る旅行のプロが腕を発揮するヤマ場はこの先も待ち受けていそうです。

【もう見られない…】これが国鉄形電車「最後の光景」です!(写真29枚)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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