「右折なのになぜ左へ?」バスの“不可解な動き”に隠されたスゴ技とは「あおりハンドル」とは決定的に違う「オフセット」の正体
交差点で右折待ちをしているバスが、なぜか左側の白線ギリギリに寄っていることがあります。一見すると「大回り」ですが、そこにはバス特有の切実な事情がありました。いったい、どういうことなのでしょうか。
お尻が1mも振れる!?「リアオーバーハング」の恐怖
バスが左に寄る理由は、内輪差だけではありません。もうひとつ、バス特有の構造である「リアオーバーハング」の問題があります。
リアオーバーハングとは、後輪から車体の一番後ろまでの部分を指します。バスはこの部分が非常に長いのが特徴です。
クルマがハンドルを切って曲がるとき、テコの原理のように、車体のお尻は曲がる方向とは逆側に振られます。右折時であれば、お尻は左側へと振られることになります。
全長12m級の大型バスの場合、このお尻の振り出し幅は、最大で約1mにも達するとされています。
もし、バスが車線の中央寄りや右側から、急ハンドルで右折しようとしたらどうなるでしょうか。この1mもの「お尻の振り出し」によって、左側の車線にいるクルマや、路肩のガードレールをなぎ倒してしまうリスクがあるのです。
そこで「オフセット」の出番です。あらかじめ左に寄せておき、交差点の奥深くまで進んでから緩やかなカーブを描いて右折することで、この急激なお尻の振り出しを抑え、動きをマイルドにする効果があるのです。
つまり、交差点で見かける「左寄りのバス」は、単に運転手が下手なわけでも、無意味に大回りをしているわけでもありません。
巨大な内輪差で内側を引っかけないようにしつつ、同時にお尻の振り出しで周囲を巻き込まないように計算された、安全確保のためのプロの「防衛運転」だといえるでしょう。





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