「安全のため」重すぎる設備、重すぎる人の負担――地方鉄道の“三重苦”を救う「シンプル化技術」の数々 あとは政策だけ?
赤字、設備の老朽化、そして人手不足に苦しむ地方の鉄道。その三重苦を技術が解決するかもしれません。重すぎる設備を軽くすることが、持続の糸口になりそうです。
重すぎる人の負担 でも待遇は上げにくい
軌道の管理も大変な仕事です。列車の運行や気象、腐食などで日々状態が変わる線路を検査し、補正や修繕を加え、常に安全な状態に保たなければなりません。脱線事故の原因となる軌間拡大などのレールの異常を把握するために高価な軌道検測車を借りると、年に一度程度しか計測できません。
こうした電気設備・線路・構造物など多様な設備の維持管理を、地方鉄道では少人数で行わなければなりません。また、ワンマン運行のローカル線では、乗客20~30名に対し乗務員1名という比率は、都市鉄道の約50倍も高く、人件費が収益を圧迫します。
ワンマン運行では車椅子介助、運賃収受、急病人対応、倒木や雪の吹き溜まり、鹿や猪との衝突、車両の故障対応といった多岐にわたる事案に柔軟に対応しつつ、頑健性も求められます。仕事の内容は高度ですが、待遇を上げられず、人材確保が非常に厳しいのです。
維持管理を“軽く”する技術の数々
前述したような課題に対し、シンポジウムでは実践的な技術開発が紹介されました。
交通安全環境研究所の長谷川智紀博士は、保線について、営業車両に小型センサーや汎用機器を搭載する手法を解説。特に軌間拡大の要注意箇所を把握するため、床下に設置した小型カメラで車輪とレールを動画撮影し、線路状態を解析・評価するといいます。これにより、高価な軌道検測車に代わり、線路の状態を動的かつ高頻度に把握できます。
遮断機や警報機が無い第4種踏切には、第1種踏切への切替や廃止までの代替として、列車接近を無線で伝え通行者や運転士に知らせる支援装置も開発中です。太陽電池で駆動するので電源も不要です。
さらに、ATS-SP形の開発に携わった日本大学の中村英夫名誉教授からは、2025年2月に山形鉄道が導入を発表した無線列車制御システムの構想が紹介されました。これは、今までの連動装置、信号、ケーブルまで無くしてしまい、指令センターと列車・転てつ機・踏切が携帯電話回線などの無線で情報を交換するというものです。
前方に列車がいない、踏切の遮断が完了し障害物がない、転てつ機が自列車に進路を形成し鎖錠が完了すれば、その地点まで進行するのです。閉塞もなくなり、制御も単純になります。
進入してはいけない地点には、自列車の位置と進路を正確に把握し、ATS-P形と同等のパターン制御で確実に列車を停止させます。このパターン制御の導入は、自動運転GoA2.5(添乗員付きドライバーレス運転)の基盤にもなります。





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