首都高の「10%値上げ」これをやめれば必要ないのでは?「破格の割引」その実態と値上げの関係
首都高速が維持管理も資材高や労務費の高騰の影響を受け、値上げせざるを得なくなったと説明。しかし、利用者すべてが正規料金を負担していれば、必要はなかったかもしれません。背景に大きすぎる「割引」の存在があります。
値上げの増収分も上回るほどの「物流対策」
首都高速の料金値上げが2025年12月24日に発表されました。現行の料金を全体で1kmあたり10%引き上げます。高速道路の通行料金にもタクシー料金と同じような初乗り料金(ターミナルチャージ)があるので、2024年の通行実績を基に試算すると、利用車全体で6.7%~9.2%の負担増になります。
なぜ値上げが必要なのか。首都高速が大きな要因として掲げるのは、維持管理コストの上昇。いわゆるコストプッシュ型の値上げです。直近10年間でコストは約1.4倍に上昇し、労務費や材料費の高騰分に対応できていない状況です。「維持管理コストの上昇への対応が喫緊の課題」と、寺山 徹社長は会見で説明しました。
首都高速によると年間通行料金収入は2700億円。それに対する支出も2700億円。管理費(約800億円)と建設費などの債務返済(約1900億円)が内訳です。高速道路会社は償還事業を行う民間会社なので、収支が均衡していれば企業の利潤は不要です。
2026年10月予定の料金改定以降は、通行料金の値上げによる約200億円の収入増に対して、労務費増による200億円のコスト増が見込まれ、新たな年間支出額は約2900億円。このため、通行料金の値上げが欠かせないというわけです。
ただ、これは「当面5年の維持管理」を見越した対策で、その先は未定だといいます。なぜ未定なのかは、次の理由でわかります。
首都高速がもう1つの理由として挙げるのが「物流対策」です。
高速道路会社の物流対策とは、通行料金を「大口・多頻度割引」で大幅に割り引いて、輸送コストを低く抑えるための対策のことをいいます。同社は料金改定と同時に、2030年までこの割引を継続すると公表しました。5年後もこの割引を続けるなら、さらに通行料金の値上げの必要に迫られます。
首都高速は、この物流対策に年間約300億円を見込んでいます。ただ、前述の収支の説明には、この300億円は含まれていません。すでに、割引額を差し引いた通行料金収入を記載しているからです。割引をしなければ、2700億円+300億円で、収入は3000億円が見込めます。200億円の支出増を差し引いても、収支は100億円のプラスとなる計算です。





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