首都高の「10%値上げ」これをやめれば必要ないのでは?「破格の割引」その実態と値上げの関係

首都高速が維持管理も資材高や労務費の高騰の影響を受け、値上げせざるを得なくなったと説明。しかし、利用者すべてが正規料金を負担していれば、必要はなかったかもしれません。背景に大きすぎる「割引」の存在があります。

「公平性の観点からも見直す必要ある」の意見も

 大口・多頻度割引には、2つの問題があります。1つは割引額が非常に大きいこと。最大で45%の割引です。もう1つは他の割引も重複可能で、通行料金の意味をなしていないことです。

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値上げ案を公表する寺山 徹社長(中島みなみ撮影)

 確かに、月間利用額が100万円超、1台あたりの平均利用額が5000円を超える”大口”契約者であることが前提ですが、大口割引が10%の上に、利用頻度に応じて35%の割引が上乗せされて、最大45%割引されます。さらにその上で、他の割引との併用ができます。例えば、0時~4時に利用すると、深夜割引の20%が適用されますが、その割引後の料金に大口・多頻度割引が適用されます。

 どんな利用車が割引を受けているのか。同社は次のように説明します。

 「車種区分では中型以上が大口・多頻度割引の中心です。この中型以上の約80%が割引の対象となっていて、最大で普通車とほぼ同額になります」

 通行料金は、重量による道路損傷度、大きさによる道路占有度、経費節減などの便益の3つの要素で適正な車種区分比率が定められています。普通車1に対して、中型車1.2、大型車1.65。しかし、大きな割引によって、料金収入の実態は普通車料金レベルに抑えられているわけです。

 今回の値上げ案策定の指針となった「首都高の持続可能な道路サービスに関する検討会」では経営の改善点として、大口・多頻度割引についても「受益と負担の均衡性を図るという公平性の観点からも見直す必要がある」と指摘しました。日々の暮らしに影響する物流コストの抑制は必要ですが、高速道路の通行料金だけで支えるべきなのでしょうか。

 首都高速は今回の値上げ案に対するパブリックコメントの募集を始めています。2026年からは1都2県の関係自治体による地方議会の議論も始まります。通行料金はどうあるべきか。単に値上げ幅だけの問題ではありません。

【え…!】これが首都高の「値上げ案」と「破格の割引」です(画像)

Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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