掃海艦、増やします!「けらま」進水で見えた海自の新方針 もがみ型護衛艦の“弱点”めぐる見直し
2025年12月、JMU横浜事業所の鶴見工場において、新たな掃海艦「けらま」が命名・進水しました。ただ、12隻調達したもがみ型護衛艦にも掃海機能が付与されていたはず。なぜ、もがみ型とあわじ型の平行整備になったのでしょうか。
あわじ型の継続調達は日本造船界にとっても大事!
実際、防衛省は2022年末に策定した「防衛力整備計画」の中で、機雷戦能力を強化するため、掃海用無人アセットを管制する掃海艦艇を増勢する方針が明記されています。これらの方針に基づいて、あわじ型は2年に1隻ずつ整備が進められており、2024年度予算では6番艦の建造費263億円を計上。2026年度の概算要求には7番艦の建造費用342億円が盛り込まれています。
1番艦「あわじ」から3番艦「えたじま」までは2017年から2021年にかけて順次就役していましたが、4番艦「のうみ」が就役したのは2025年3月と建造の間隔が4年ほど開いています。このためJMU鶴見では、3番艦の竣工から4番艦の建造決定まで手持ち工事量が一気に減少する事態も起きていました。あわじ型はJMU鶴見が建造する最大の船種であることから、継続的な受注は操業の安定にもつながるでしょう。
今回、進水した掃海艦「けらま」は機雷戦装備として使い捨ての自走式機雷処分用弾薬(EMD)や新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムOQQ-10、機雷捜索用水中無人機(UUV)OZZ-4などを搭載。これらに加えて情報収集ROV(隔操作型無人潜水機)も装備すると見られます。
海上自衛隊は2025年度末に護衛艦隊と掃海隊群を統合し、地方隊に所属していた艦艇も組み込んだ水上艦隊を新編する大規模な改編を行います。自衛艦隊の下に置かれる水上艦隊は第1から第3までの3個水上戦群と水陸両用戦機雷戦群、哨戒防備群などで構成されます。もがみ型FFMやさくら型哨戒艦は哨戒防備群へ配属され「けらま」をはじめとした掃海艦は水陸両用戦機雷戦群へ配属されることになります。
こうした将来の動きを鑑みると、次代の日の丸掃海部隊を背負って立つのが、「けらま」を始めとした、あわじ型掃海艦と言えるでしょう。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。





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