大きな窓の特急、なぜ減っている? 絶滅寸前「“ビュー”のつく特急」たち 「どこがビューなのか」と言われた車両も!?
1980年代後半~1990年代のJR特急車両は、愛称に「ビュー」を付けるという流行りがありました。国鉄時代からの変革を示すために、大きな側窓を売りとする車両が増えたのです。現在ではあまり見られなくなった超大窓の特急形電車を取り上げます。
キハ85系気動車が始まり
1987(昭和62)年に国鉄が分割民営化された際、「JRらしさ」をアピールする斬新な車両デザインが求められました。国鉄末期に窓の大きな100系新幹線が好評だったように、「新しい時代らしい明るい車両」が求められたのです。
国鉄の485系、189系などの特急形車両も、グレードアップ時に側窓を拡大したり、グリーン車を先頭車両にしてガラス張りの展望車としたりする改造工事が頻繁に行われました。こうした背景から、側窓を売りとする特急形車両が1980年代後半から1990年代に流行しました。これらは車両や列車の愛称に「ビュー」が付いていました。
始まりは、1989(平成元)年に登場したキハ85系気動車です。高山本線用に国鉄形キハ82系を置き換える目的で導入されたキハ85系は、JR東海の「ワイドビュー」車両の先駆けでした。
先頭車両は前面展望を可能としたガラス張り。眺望性を重視して、すべての座席を床面より20cm高い位置に置き、幅1920mm×高さ950mmという超大窓を配置しました。国鉄時代に「展望車」として製造されたクロ151形「パーラーカー」の側窓が幅2000mm×高さ1000mmですから、全車両がかつての展望車レベルの眺望性だったわけです。
現在、このキハ85系はJR東海から引退しているものの、京都丹後鉄道でKTR8500形として活躍しています。
なお、後継車両のHC85系は前面展望こそなくなりましたが、側窓サイズは維持されており、最近の特急車両としては珍しい超大窓を踏襲しています。
JR東日本にも「ビュー」を冠した車両が登場
続いて1990(平成2)年に登場したのがJR東日本251系電車の特急「スーパービュー踊り子」です。
1・2号車のグリーン車は2階建てで、2階が1+2列のグリーン席、先頭部分には展望席(あまり前は見えませんでしたが……)、階下はラウンジとグリーン個室という超豪華仕様でした。普通車も高さ1440mmの超大窓が採用されており、まさに「スーパービュー」といえました。
残念ながら引退済みで保存車もありませんが、後継のE261系「サフィール踊り子」と比較しても側窓の広さでは明らかに上でした。
翌1991(平成3)年に登場したのが、JR東海371系電車の特急「(ワイドビュー)あさぎり」です。中間に2階建てグリーン車2両を配置しており、列車内でフルーツを切って提供するという独自のシートサービスが行われました。普通車の側窓は幅1650mm×高さ1020mmの大窓を採用。また、運転席越しの前面展望も可能でした。
現在は富士山麓電気鉄道8500系「富士山ビュー特急」として現役です。ただ、リニューアル改造時に側窓には席ごとの木枠が付いたため、大窓の印象はありません。
1993(平成5)年には、JR東日本255系電車「房総ビューエクスプレス」が登場。「ビュー」と銘打った車両ですが、ベースとなった253系「成田エクスプレス」の側窓が高さ600mmで、それを700mmに拡大したものでした。国鉄形特急車両の485系でも普通車の窓は幅1435mm×高さ645mmだったので、「どこがビュー車両なのか」という批判もあり、二次車からは側窓の高さが760mmに拡大しています。この255系は定期運用を終了しています。
引退した車両がある一方で後継車両も登場予定
1994(平成6)年に登場したのはJR東海383系電車の特急「(ワイドビュー)しなの」です。側窓はキハ85系よりは小さくなったものの、高さ850mmの大窓を採用し、グリーン車の展望仕様も踏襲しました。この車両は、2026年度に後継385系の量産先行車が登場し、2029年に置き換えが始まるようです。前面展望を含む展望性の維持が盛り込まれており、JR東海らしい特急形電車になると考えられます。
翌1995(平成7)年にJR東海は、373系電車の特急「(ワイドビュー)ふじかわ」を登場させます。現時点で最後の「ワイドビュー」車両なだけに、側窓に高さ930mmの大窓を採用しており、身延線や飯田線の美しい自然を楽しめます。373系の置き換えは発表されておらず、もうしばらくワイドな風景を楽しめそうです。
これ以降、「ビュー」を冠する特急形車両は登場していません。小田急電鉄70000形「GSE」や、西武鉄道001系「ラビュー」、前述したHC85系のように、現在も大窓を採用した車両はあるものの、主流とはいえない状況です。
側窓を拡大すると窓ガラスが重くなり重量的に不利なほか、冷暖房効率や遮音性でも劣ることから、採用例は減っています。しかし、車窓が旅の楽しさであることを考えるなら、窓の大きな車両の魅力は薄れていないと感じます。「ビュー」を冠した車両は引退時期に差しかかっていますが、今後も車窓を楽しめる車両の登場を願う次第です。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。





コメント