えっ「自家用」バスなんですか? どう見てもフツーのバスだが… 意外と身近なバスジャンル 最近は「自家用へ逆戻り」現象も!?
バスの種類では、「自家用」のバスも一つのジャンルを築いているといえるほど、多様な使用例があります。意外と身近に存在する「自家用」バスですが、メリットもデメリットも存在します。
「自家用」やめて温泉旅館が「バス事業者」になる例も!?
事業者の視点でみると、事業用バスは運行管理体制などの規制が厳しいため、自家用の方が運行コストを抑えられます。運転手も、自家用なら「大型一種」免許で運転できますが、事業用だと「大型二種」が必要でハードルが上がります。
そのため、マイクロバスを用い近場しか走らない場合、自家用バスが選ばれる傾向があります。ただ、運転手の採用、育成コストなどを考慮すると、台数が多く走行距離が長い場合などは、バス事業者に発注した方が結果として安上がりだともいえます。
貸切バス分野は2000年に規制緩和があり、後発参入が認められました。それにより運賃(チャーター代)が下落し、自家用バスを使用していた学校や企業が、送迎バス業務を貸切バス事業者にアウトソースする事例が増えました。
余談ですが、この規制緩和の際、それまで自家用バスで宿泊客を送迎していた温泉旅館などが、安全面のハードルをクリアして貸切バスの事業許可を得て緑ナンバーに切り替える例も相次ぎました。宿泊客からバス運賃をもらわない無料送迎の場合、駅や空港から宿までの単純な送迎に限定されますが、宿泊客(主に社員旅行などの団体)から貸切バスの発注を受ける形だと、観光地に立ち寄ることも認められるからです。
「やっぱ自家用」再び増加 それでもいいの?
さて、貸切バス業界で重要な市場に成長した送迎バス業務ですが、変化の可能性もあります。いったん下落した貸切バス運賃は、相次いだ重大事故などを受け新制度が導入され反転し、2025年にはさらに値上げされました。
送迎バス業務をアウトソースした企業や学校の中には、この値上がりを受けて再び内製化、つまり自家用バスに戻すことを検討し始める例も出てきました。
コスト抑制が目的ですが、課題もあります。一つには、もちろん、たとえ白ナンバー(自家用)であってもプロの運転手には違いありませんから、緑ナンバー(事業用)と同様、事故を起こさないことが重要です。万一、重大な事故を起こしてしまうと、学校や企業の慣れない担当者が、被害者や警察、保険会社などの対応を引き受けるしかありません。
もう一つ、“運転手に選ばれる職場環境づくり”も、成否のカギを握っています。
国全体の労働力不足を受けバス運転手も引く手あまたのなか、給与水準や休日数などの待遇はもちろん、育成、教育体制や運転手個人のキャリアパスつくりなどの面でプロの事業者並みの環境を提供できなければ、運転手が定着してくれないからです。
単にコスト削減だけを追求すれば、運転手確保に苦戦し、けっきょくは再びアウトソースを余儀なくされることが予測されます。
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。著書に『高速バスのビジネス』(成山堂書店)、『「マーケティング感覚」の実装力』(同文舘出版)。新聞、テレビなどでコメント多数。





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