東京の“満員電車”は避けられた? 幻の「首都改造計画」が描いた未来 実現したら私鉄はなかった?

大阪では府と市の二重行政解消を目的とした「都構想」がたびたび争点になりますが、かつての東京府と東京市は戦時下の1943年、「東京都」に統合されました。その背景には「防空」を目的とした壮大な都市計画がありました。

戦時下に生まれた「東京都」

 大阪では府と市の二重行政解消を目的とした「都構想」がたびたび争点になりますが、なぜ東京府と東京市は「東京都」に統合されたのでしょうか。そして都の成立は暮らしにどのような影響を与えたのでしょうか。

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新宿の東京都庁第一本庁舎(画像:まちゃー / PIXTA)

 東京市は1932(昭和7)年に周辺82町村を合併し、現在の23区とほぼ同じ範囲の35区に拡大しました。従来の15区は江戸以来の市街地が中心でしたが、大正中期から郊外化が進んだため、市外から都心への通勤者が急増。市と周辺町村の結びつきが強まったため、包括的な行政を進めるための合併でした。

 合併の結果、東京府の人口の93%が東京市の住民となり、府税総額の96%を東京市民が収めることになりました。そうなると府と市の役割分担が問題になり、両者を一体化する都制が議論されますが、組織のあり方をめぐって政府と議員の対立があり、事態は進みません。

 そのような停滞を打ち破ったのは、挙国一致を掲げた戦争でした。1943(昭和18)年の第81回帝国議会で政府は、「大東亜」の首都たる東京に国家的意義と性格に適応する確固たる体制を確立するため、府市併存の二重機構を解消する必要があるとして「東京都制案」を提出。同年7月1日に東京都制が施行されました。

 地方自治を管轄する内務省地方局の加藤陽三(後に衆議院議員)は、著書『東京都制概論』で、「帝都の国民生活を確保し、戦時下強力かつ明朗なる帝都を建設するためには、帝都の国民防衛陣の強化に、国民指導の徹底に、はたまた生活必需物資の配給に、交通、政争及び水道等の諸事業の円滑、適実なる遂行を期すること極めて切なる」と述べており、戦時体制と都制が表裏一体で語られていたことが分かります。

 そのような一元的行政の最重要課題とされたのが、「防空」です。1930年代に入ると航空機の急速な発達で都市に対する戦略爆撃の脅威が高まり、日本でも1937(昭和12)年に防空法が施行。1940(昭和15)年に都市計画法が改正され、都市計画の目的に防空が追加されました。

 1940年当時、東京市の人口は735万人。人口800万人以上のロンドンに次ぐ世界第2位の都市とされていましたが、面積はロンドンの半分以下であり、人口密度が非常に高い都市でした。加えて木造建築が多い日本の都市が火災に弱いことは、関東大震災が証明しています。

 都心人口の過大集中は交通機関の混雑や環境悪化、住宅不足など様々な問題を引き起こします。そのため東京の都市計画は長らく、市街地の拡大を封じ込め、都市機能と人口を分散させることが主題でした。そこで登場するのが欧米で流行していた、市街地を取り囲むように「グリーンベルト(環状緑地帯)」を配置し、環境保全と開発制限を実施する手法です。

 そして当時の東京だと、そこに防空が乗っかってきました。1940年に制定された「東京防空都市計画案大綱」は、「膨張及び疎開計画」として工場、学校その他人口を吸収する施設の新設防止、空地指定、市街地を幅100mの防空帯で分割するなどの方針を決定します。防空帯は中央に25m道路、両脇は樹林帯で、その中に防空壕を設置、また防空帯に面した建物は耐火構造とする計画でした。

【現在の姿】東京に残る「防空緑地」の一例(写真)

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