「地形が厳しすぎる」沿線に“住んでもらう”には? 京急が進める「かなり泥臭い戦略」の凄み キッカケはマグロ
人口減少の波が迫るなか、鉄道各社は沿線の価値向上に舵を切っています。手法は様々ですが、京急はかなり大変な方法をあえて採っているようです。若い世代の心を掴む“戦略”を探ります。
起伏が激しすぎて開発の余地が限られる京急沿線
マンションや一軒家を購入し、その土地に根を張る。それは、自分が選んだ鉄道沿線と運命を共にすることを意味します。「選んだ沿線に、間違いはないはず」は、住民にとって切実な願いです。
これまで大手民鉄は、宅地開発や商業施設などで成長してきました。しかし、全国一斉に人口が減少する局面を迎え、通勤・通学人口が減れば、商店や病院が消えて生活は不便になり、不動産価値も下がり、最悪の場合、路線の存続危機にもつながりかねません。これは住民と鉄道会社、双方にとっての死活問題です。
人口の「量」が増えなくなる中、民鉄各社は、沿線不動産の「質」を高めるエリアマネジメントに力を入れています。各社が試行錯誤をするなかで、京浜急行電鉄(京急)は、沿線の小規模な事業者や地域団体と向き合う異質な戦略を進めています。
京急沿線は京浜工業地帯の雇用減少など、多様な課題がありますが、特に横浜以南の三浦半島は丘陵が海際まで迫り、他社のような大規模な駅ビルや住宅開発の余地は限られます。
沿線末端の神奈川県三浦市は、1995年から30年間で人口が28%減、4万人を割り込み、大規模な商業施設は成立しにくく、かつて活気があった個人商店も消えかけていました。
マグロが半島の危機を救った
こうした課題に対する京急の変革の原点は、2009年発売の「みさきまぐろきっぷ」です。三崎口駅までの京急線往復乗車券と路線バスなどの移動手段、「三崎マグロ」で有名な三浦市内の加盟飲食店で使えるマグロ料理の食事券、さらに周辺の施設利用券がセットになった商品。現在は品川発で3750~4250円(日によって変動。紙きっぷは4250円)です。
このきっぷは初年度に1万5898枚を売り上げ、その後も好調に推移します。2017年には三浦エリアで2階建てオープントップバスの運行を開始し、周遊区間も拡大されました。この記念に三崎口の駅名標が「三崎マグロ駅」に掛け替えられ、同年度の販売枚数は初年度の12.8倍にあたる20万3634枚を記録。三浦・三崎エリアの飲食店に1日平均558人(三崎口乗降客数の6.2%相当)を流し込みました。
横浜・品川から高速で結ばれたこの地には、豊かな海と山の自然と「個性的な人」という、魅力的な資源が眠っていたのです。しかし、魅力の大半を占める地元の小規模な商店には、集客基盤がありませんでした。





嘗てこのルートは明治時代に横須賀線のルートになる予定でした。