米も露も「敵に学べ」? イランが進化させた“怪鳥”の恐るべき完成度 そのルーツの行き着く先は?
夜空に響く甲高いエンジン音とともに都市へ突入する自爆ドローンは、現代戦を象徴する存在です。興味深いことに、イランやアメリカ、ロシアで運用される機体は酷似していますが、そのルーツは1980年代のドイツにあるかもしれません。
イランが進化させた「貧者の巡航ミサイル」
シャヘド136の特徴は明確です。民生品を活用した低コスト設計、シンプルで大量生産しやすい構造、GPSと慣性航法による長距離飛行能力です。これにより徘徊型弾薬は、局地戦向け戦術兵器から「貧者の巡航ミサイル」、すなわち廉価版の戦略兵器へと進化しました。
これら機体の外形はDARと非常によく似ており、専門家の間でも類似性が指摘されています。ただし、直接的な技術継承があったかどうかは確認されていません。系譜として連続している可能性はあるものの、具体的な技術移転の有無は不明です。
さらに興味深いのは、航空機先進国であるアメリカやロシアも同じ答えに行き着いている点です。ロシアはシャヘドをゲラン2として量産し、巡航ミサイル不足を補う消耗戦兵器としてウクライナ戦争に大量投入しています。
一方アメリカも、安価な脅威に対抗するための対称戦力としてLUCASを導入し、対イラン作戦で実戦に初めて投入しました。「敵に学んだ兵器」をその「敵」に使用するという皮肉となりました。
「敵に学ぶ」とはいっても、単に形状を模倣したわけではありません。デルタ翼とプッシャーという構成は、低コスト・シンプル構造・量産性といった条件を突き詰めた結果として導かれた、いわば技術的な最適解です。その意味で、シャヘドの完成度の高さは特筆すべきものがあります。
むしろ各国が学んだ本質は、形ではなく戦い方です。すなわち、安価なドローンを大量投入することで、高価な迎撃手段を消耗させる「コストの非対称性」を利用した戦争です。これは従来の「高性能兵器同士の戦い」とは全く異なる発想でした。
近年、戦略兵器は守るも攻めるも高性能を追い求め複雑高価になっています。超高速滑空弾やイージスシステムはその典型です。そうした流れに対し、イランの自爆ドローンはまったく逆の方向から一石を投じました。
1980年代のドイツで構想され、イスラエルが実用化し、イランが戦略兵器へと昇華させ、そしてアメリカやロシアも採用する――この流れは、単なる技術の模倣や伝播ではありません。「安価に遠くを攻撃する」という普遍的な課題に対し、各国が同じ答えにたどり着いた結果といえるでしょう。
そして今、その“シンプルな答え”は戦場だけでなく、国家の防衛のあり方そのものに問いを突きつけています。高価な兵器で守り続けるのか、それとも安価な脅威に見合った新たな防御の形を模索するのか。デルタ翼の自爆ドローンは、戦争の未来を変えつつあります。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。





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