リニア中央新幹線の専用貨物列車が出発進行 その目的とは?(写真13枚)
貨物線で運ばれた発生土は、船に積み替えられ千葉へ
貨物列車のルートは、梶ヶ谷貨物ターミナル駅から「武蔵野南線」「尻手短絡線」と呼ばれる貨物線を通り、尻手駅付近で南武線に入って浜川崎駅、続いて鶴見線に入り扇町駅、その先にある三井埠頭へ、というのが基本。三井埠頭へ到着した土砂は、船に積み替えて千葉県に輸送されます。採石場の跡地に運び、その埋め戻しに利用するそうです。
梶ヶ谷非常口と資材搬入口の工事における発生土の運搬は、状況によって異なるものの、1日あたり最大でダンプ80台分近くになるという想定です。JR東海によると、貨物列車の運行は当面のあいだ1日1往復(機関車を除き9両編成、ダンプ27台分)の予定ですが、できる限り鉄道で運べるよう、ダイヤの調整や車両の増結といった取り組みを積極的に行っていくとのこと。また今回の貨物列車運行にあたり、発生土専用のコンテナが150個、製作されています。
直径50mと30mの穴
中央新幹線は、品川駅から名古屋駅に向かって大深度地下(地下40m以深)を進行。川崎市内も16.3kmの全区間が大深度地下で、途中、地上と結ぶ非常口が5か所に設けられます。
そのうちのひとつが梶ヶ谷非常口で、直径およそ50mの“穴”が、地下80mまで掘られます。またこの梶ヶ谷非常口付近の地下には、中央新幹線の線路保守作業車を留置する施設が置かれるため、そこへ必要な資材を届けるための資材搬入口(直径およそ30m)も掘られています。
貨物列車で運ばれる、このふたつの“穴”による発生土は29万立方メートルが見込まれており、「東京ドーム約4分の1杯分」にあたります。また、発生土の鉄道貨物輸送は現時点ではこのふたつの“穴”に関するものだけで、中央新幹線の本線トンネル工事などそれ以外の発生土に関しては、まだ決まっていないそうです。
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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
既に視野に入っているとは思いますが、東日本大震災の被災地の土地の嵩上げ工事に活用するのが一番だと思います。「東京オリンピックを返上してでも工事の加速度を上げろ」と言いたくなる程です。
それは妙案。わざわざ千葉やアルプスの渓流をぶっ潰すことない。
大深度地下にしたことで大都市圏区間の用地補償費を減額できた一方で、トンネルの掘削に伴う残度の運搬と処分、地下水の処理が課題になっているかと思います。
貨物列車を活用することは、残土の運搬費の節減に寄与します。一方で長距離を運ぶには費用がかかるので、東京湾の最寄りの港までにするのも適切です。後は、大量に処分できる場所を探すことで、海面を埋め立てても構わない場所があれば、船を使うこともできて一番望ましいことになります。なお、費用が少なくて済むということでリニアの工場現場近くに処分するのは避けるべきでしょう。無用のトラブルを招きかねません。技術開発の動向を見ながらトンネルの掘削工法を適切に選定して、なるべく長距離を一気に掘れるように計画しておく必要があります。