複葉機があのカタチのワケ 日本唯一、飛行可能な戦間期モデルの乗り心地は…?

複葉機といえば、2枚の翼に開放型の操縦席というイメージかもしれませんが、まさにそのイメージどおりの飛行可能な機体が日本にも1機だけ存在します。その乗り心地など、実際のところはどのようなものなのでしょうか。

人が「いいかげん」に空を飛んでいた時代を物語る機体

「ランウェイ・イズ・クリア(離陸支障なし)」

 岡南飛行場の管制塔から離陸許可が出ると「WACO」は、いまや日本では見られなくなってしまった、放射状にピストンが配置された「空冷星型エンジン」の特徴的な心地よい爆音を響かせ離陸します。僅かに風に混じるエンジンの熱気を感じながら、「窓」が存在しない「WACO」から眺める美しき瀬戸内海とその島々は、これまで何度も経験してきた旅客機という「箱」から眺めるものとは全く異質のものであり、まさに「空を飛んでいる」という体験そのものを全身で実感することができました。

Large 20171111 01
「WACO」の操縦席から瀬戸大橋をのぞむ。わずかに揺らいで見える筋はエンジンの排気によるもの(画像:内海昌浩さん提供)。

 ですが実際に操縦するパイロットの視点においては、瀬戸内海は美しさの反面、どこにいっても同じような島ばかりで地図を見ても迷子になってしまいそうな厳しさもあると内海さんは言います。一見すると旧式な「WACO」にもGPSといった航法装置は搭載されているものの、こうした計器はほとんど使わないとか。地元岡南飛行場の自家用操縦士たちはその代わり、どちらの方向から見ても円錐に見える特徴的な「大槌島(おおづちじま)」がどの位置に見えるかによって、自分の位置を把握するそうです。

Large 20171111 02
どこから見ても円錐の形が特徴的な大槌島、北側は岡山県、南側は香川県に属する。写真は島の北方より香川県方向をのぞんだ様子(画像:内海昌浩さん提供)。

「WACO」は、日本で飛行可能な状態にある飛行機のなかでは設計がもっとも古い機体であり、だからこそ内海氏は「いい加減さ」など操縦する楽しさにあふれた面白い古き良き飛行機だと言います。

 たとえば燃料計は、タンクの下に飛び出した透明な筒に浮きが見えたら「あと40分くらいで燃料が無くなるから降りろ」という意味になる、といったような大雑把なものであったり、また星型エンジンの機構上エンジンオイルが駐機中も飛行中もほとんどだだ洩れで、一般的なセスナ機の3~4倍にあたる5ガロン(23リットル)も使用していたり、また、サッカー場のような広場さえあれば離着陸できた時代の名残なのか、強い横風で離着陸するのは難しかったりなど、その魅力を語ってくれました。

【了】

この記事の画像をもっと見る(10枚)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

最新記事

コメント

6件のコメント

  1. >エンジンオイルだだ漏れ

    小学生のとき、年輩の先生から戦時中戦闘機の下面のオイル汚れをガソリンで掃除した話を聞いた。

    戦時中の話を親戚から聞いていて、同年より色々知っていたからかわいがってもらえた。

    …ひどい近眼と運動が不得意でしごかれ、連帯責任を憎むが故に日教組に入ったという複雑な人だった。

  2. 『紅の豚』観ようっと。

  3. キャノピーと風防のある複葉機はあるにはある。例えばアメリカのSBCヘルダイバー急降下爆撃機(太平洋戦争後期の同名のSB2Cとは全くの別物)とかイギリスのアルバコア雷撃機とか。しかし見た目も無様すぎる。やはり複葉機は開放コクピットでないと似合わない。

  4. だれも「戦間『期』モデル」をスルーしてる件…。

    この記事見て、エアロックが解散してしまったことを思い出しました。

    リアルタイムに観て感動した複葉機のショーでした。

    • 自己レス。

      戦闘機と見間違えてました。

      すいません。

  5. 趣味の世界ですよね。

記事ランキング

  1. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず
  2. 片山さつき大臣「実態調査はじめます」 街のクルマ屋の「保険代理店打ち切り」問題に新局面 ビッグモーター事件の余波に再び切り込む!
  3. 「海自最大の護衛艦」と「世界最大級の軍艦」が洋上で並んだ! 圧巻の編隊航行を上空から捉えたショットが公開
  4. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  5. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  4. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号