軽量化実現の新型新幹線N700S、なぜそれで乗客が便利になるのか? JR東海の大きな狙いも

軽量化で実現した「アレ」の全席設置

 それにしても、なぜJR東海は新幹線車両の軽量化を進めているのでしょうか。

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肘掛けに設置された普通車のコンセント(2018年3月10日、草町義和撮影)。

 新幹線に限りませんが、鉄道車両は重ければ重いほど線路にかかる負荷が大きくなり、痛みやすくなります。とくに200km/h以上の高速で走る新幹線の場合、負荷はさらに大きくなります。逆にいえば、軽ければ軽いほど線路は痛みにくくなり、安全性の向上やメンテナンス費用の削減を図ることができます。

 また、重い車両は騒音や振動も大きくなります。車両を軽くすれば騒音や振動が減り、乗り心地の向上を図ったり、線路の近くに住んでいる人たちに可能な限り迷惑をかけないようにすることができます。

 軽量化の利点はこれだけではありません。人間が重い荷物を持って走るのと、荷物を全く持たずに走るのとでは、荷物を持たずに走った方が疲れません。これと同じように、車両を軽くすればするほど、列車の運転で必要な電気の量を減らせるのです。N700Sの場合、285km/hの走行時でN700Aより電力消費量を約7%削減できるといいます。

 ちなみに、電力消費量が減るということは、車内で使える電気に「余裕」ができるということでもあります。この「余裕」を使って実現したといえるのが、電源コンセントの全席設置です。

 N700Aではグリーン車のすべての座席にひとつずつコンセントを提供していましたが、普通車は窓側の壁にひとつだけ設置していました。N700Sは普通車の座席も肘掛けにコンセントを設置し、全席設置を実現。N700Sの導入が本格化すれば、「スマートフォンのバッテリーが切れたけど窓側の席を確保できなかった。モバイルバッテリーも忘れた。どうしよう……」と焦ることも減るでしょう。

 また、N700Sはリチウムイオン電池を使った「バッテリー自走システム」も搭載。架線から電気を取り入れることなく、自力で走ることができるようになります。長い距離を高速で運転することはできませんが、地震の発生で停電したときなどは、とりあえずトンネルや鉄橋の外に出て乗客を安全に誘導するといった対応も可能になります。

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コメント

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6件のコメント

  1. 軽量化するなら台車はやっちゃダメだと聞いた事がある。
    京急は高速化の為、台車を軽量化すると危険だから車体をアルミにしたらしい。
    台車は重くするか、東武みたいに軽くても高性能な台車にした方が良いそうです。

  2. いずれは車種統一の為に、山陽九州直通もN700Sのバリエーションになるんだろうな

  3. 12両や8両にする理由は将来リニアが出来たり、人口減少による現在の東海道新幹線の乗客数減少に対応する目的とも聞いたかが。

  4. >線路の近くに住んでいる人たちに可能な限り迷惑をかけないようにすることができます
    じゃあ全席にコンセントつけずにもっと軽くしたほうがいいじゃない…

    • コンセントつけてもほとんど重量増・騒音増になならないのでは。
      あくまでういた電力による電力余裕をコンセントに回しているだけで、これはほとんど騒音増にはつながらない。

  5. 突飛だが被災した在来線を新幹線に造りかえたり路線自体を伸ばすのもあり。その際に活躍するのが4両編成程度の列車。N700Sが短編成から長編成様々な編成で活躍する事に期待します!