「爆買い」後の貸切バス業界 フル稼働の活況から「稼働率1割」へ下落も 事業者間の優劣鮮明に

変化したインバウンドの受け皿 貸切バス市場は縮小の方向へ

 2018年現在、インバウンドの総数は依然として増加していますが、団体よりもFITの比率が上がり、バス業界では、富士五湖や高山などFITに人気の観光地に向かう高速バスや、定期観光バス(はとバスなど)の外国語コースなどにインバウンド対応の主役が移りました。50年以上の歴史を持つJTBの「サンライズツアー」に代表される、「着地型ツアー」(現地参加型のツアー)も人気です。

 ただ、高速バスや定期観光バスは法的には乗合(路線)バスであるため、貸切バス事業者にとっては参入が難しいうえ、海外の旅行会社やウェブサイトを活用して個人客を集めるには、セールス体制や予約システム構築など大きな投資が必要です。また、「サンライズツアー」を企画するJTBをはじめ大手旅行会社は、貸切バス事業者を品質で選別して発注します。安全性への投資を後回しにすることで低運賃を武器に成長したような中小事業者は仕事を失い、車両稼働率が急速に低下しました。

 さらに、国内の旅行者も成熟し、総花的に多数の観光地や土産物店に回る従来型のツアーでは満足しなくなったうえ、貸切バス運賃の上昇によって、国内市場でも「格安」だけを売りにしたバスツアーは設定が困難になっています。旅行会社のツアー以外でも、少子化の進行で教育旅行(遠足や修学旅行)の生徒数が減り、社員旅行や町内会の旅行といった「社会的旅行」の減少が進むなど、貸切バス市場は縮小の方向にあります。

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東京・浜松町バスターミナルは、はとバスが主催する多くの外国人向けツアーの出発地となっている(成定竜一撮影)。

 先述のとおり、相次いだ事故を受け安全性に関する国の規制は強化されており、貸切バス事業者にとってはコストが増加しています。また、ほかの業界同様、バス運転手も不足傾向にあり、十分な待遇を提供しなければ運転手は別の会社に転職してしまいます。これまで「運行コストを下げ低運賃を提示しておけば仕事がもらえる」と安易に考えていた中小の事業者にとっては厳しい環境で、事業者間の優勝劣敗がはっきりしてきました。

 2000年の規制緩和による新規参入ラッシュから18年が経過しています。仮に、そのとき50歳で独立し貸切バス事業者を設立した社長なら今年で68歳――オーナー社長のリタイアを機に、「負け組」にあたる貸切バス事業者の淘汰が進むことも予測されます。

【了】

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コメント

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9件のコメント

  1. おあつらえじゃないか。
    余った運転士を是非とも高速バスや路線バスに振り向けてくれ。
    そっちは慢性的に人が足りないんだから。

    • 若く能力のある運転士なら双方の利益になりますが60歳過ぎたような高齢者や
      正直な話他社で問題起こした運転士が緩い条件での新免で働いているケースもあります。
      彼らは恐らく失業し、平均年齢の高い路線バスも人不足は根本的には解決しないでしょう。

  2. 事故れば運転経験が浅いだの運行管理だのと、ドライバー数以上に増車申請をポンポン受理しちゃってね~、君ら国交省陸運旅客課や貨物課はバスやシャシメーカーの廻し者なのかい?

  3. 一人当たりの 旅行消費額も 激減という程 減ってないようだが、
    もっと 長期的な 統計データに基づき 議論すべき

  4. 新車より高い中古車とか
    中古車しか買えない零細企業って、
    あまりにも無知すぎる。

    • 数年で使い捨てなので本当にカネのない事業者は20年落ちにDPF付けたのを使っていますよ。
      同業者同士(仲間内?)で融通する傾向もあるので何社も転々とする車両もあります。
      新免や地方の事業者が前所有者(大手)の塗装をそのまま使って問題になる事もありますが、
      前所有者が新免でそのまま使っているケースなんて言うのもしばしばあります。

    • 復興事業では土砂禁ダンプまで新車を上回る価格で取り引きされましたがね。
      て言うか復元事業みたいなもんでしょう
      役人も事業主も学習できないタコ壺のタコと言うか?何度でも餌に誘惑されるんですよ

  5. 通勤途中にバス販売の保管駐車場があるのですが、この二年くらい前からバスの稼働率が全くないですね
    路上から目立つところに一年前からバスのフェンダーカバーを開けて足回りやカバーでも交換でもするかのかな?と思っていたら…一年経って今に至る感じで、需要低迷で売れないんだな…と言う感じです。転売するのだろうからシッカリ管理しないと売れないだろう?と思っていましたがカバーもそのまま周辺に起きっぱなしだしありゃ深刻ですね。バスバブルの崩壊での餌食なんですかね?

    • そこは大手の中古車販売店ですか?
      営業力や取引ルートの問題もあって需要に関係なく中古車販売業の一部は動いていないようです。
      バブル期も氷河期も今に至っても廃業する業者があるというのは確かです。
      ただ確かに大手と言われるところでも苦戦している様子が見えています。
      需要が限られたところに集中しているのでしょうか?