「トレンディ」「アーバン」…時代を映す高速バスの「愛称」 近年は「ブランド」へ

最近のトレンドは「トヨタのクラウン」的なもの? 変化する愛称

 その後、高速バスの愛称は変化していきます。2002(平成25)年に高速ツアーバス(募集型企画旅行型式による都市間輸送)が容認されると、それまで市場開拓が遅れていた大都市間路線(首都圏~仙台、名古屋、京阪神)が急成長しました。多数の事業者が競合し、乗客がウェブ上で事業者や車両(座席)タイプを比較検討したうえで予約する、「バスを選んで乗る時代」が到来したのです。

 その結果、各社は「超豪華」「格安」「女性向け」など商品を多様化させ、JR系の「ドリーム号」は「プレミアムドリーム号/青春ドリーム号/レディースドリーム号」、近鉄バスらの「ツインクル号」は「ツインクル号/カジュアルツインクル号」といったように、愛称には、路線に加え座席グレードを示す役割も追加されました。

 また、新たに参入した高速ツアーバス各社(現在は制度改正により高速乗合バスに移行)は、料金比較サイトや総合予約サイト上で激しく競争しています。利用者のリピーター化を図り「指名買い」を促すため、印象的な車両カラーリングを施したり、自社(直販)サイトの会員プログラムを充実させたりと、事業者単位でのブランド(コーポレートブランド)構築に熱心です。

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平成エンタープライズの高速バス「VIPライナー」の上位グレードに位置づけられる「グランシア」(2018年2月、中島洋平撮影)。

 さらに、車両(座席)グレードごとに商品名(カテゴリーブランド)が設定され、「ウィラーエクスプレスの“リラックス”」「VIPライナーの“グランシアファースト”」という風に、コーポレートブランドとカテゴリーブランドのかけ合わせで呼ばれます。ちょうど「トヨタのクラウン」というのと同じ位置づけです。

 そのような新興勢力を首都圏~京阪神で迎え撃つジェイアールバス関東/西日本ジェイアールバス陣営は、前述のように座席グレードを多様化させたほか、「ドリーム号」のブランド化にも熱心です。2017年には「ハーバーライト号」(大阪~横浜)を「グランドリーム横浜号」に改称して「ドリーム号」ファミリーに取り込んだり、有名女性タレントをアンバサダーに起用してメディア露出を繰り返すとともに、車両へラッピングしたりと、半世紀続く路線愛称「ドリーム号」を単なる愛称から「ブランド」に昇華させる試みが続いています。

 このように高速バスにおける愛称のあり方は、時代背景や市場環境を反映して変化しているのです。

【了】

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Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

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3件のコメント

  1. まあブランドも大切だけど実際の運行会社の明記と運行形態の案内があまりにも乏しすぎて困りますね。
    どこぞのブランドのように事故したら孫請会社がぽっこり顔出して乗務員が11日連続勤務であったりとか?
    法的には男性も乗ることが可能なレディース号なんて乗り合い運行でありながら男性に見えりゃ業者が単に切符売らないか、改札で通せんぼするだけの実力行使バスだし
    またJRバスなど外国産2階建てバスを試験的に導入するも運行区間は首都圏からリゾート地の中近距離営業に止まり、規制厳しい今こそ規約をもう少し利用者に周知してもいいと思いますが
    何かイメージダウンを気にして各社本題の乗り合いや貸しきりと言った肝心の規約の区切りを示さないのはどうかと思いますがね

    • 少し脱線。

      そういや、この乗りものニュースでJRバス関東がアストロメガ入れた旨、記事で取り上げましたっけ?

      おーい、コテコテのネタはちゃんと取り上げろよ事務局さんよ。

  2. ちなみにフェニックス族の元ネタは
    「かもめ族」「つばめ族」だ。