国内ヘリパイロットの4割を輩出、陸自の「FEC」とは 資格取得へどんなコースが?

機種ごとに訓練期間も異なる

 無事に試験をクリアしたあとは、後期教育としてUH-1J「ヒューイ」やUH-60JA「ブラックホーク」、CH-47JA「チヌーク」などといったヘリコプターの実機による教育が行われます。それぞれの機種によって教育期間が異なり、最も教育期間が短いのがUH-1J「ヒューイ」の約14週間です。逆に、最も長いのがAH-64D「アパッチ・ロングボウ」で、約26週間の教育を受けることになります。そのため、FECに入校してからパイロットになるには、最短で1年9ヶ月、最長でも2年3ヶ月掛かることになります。

 こうして一人前のヘリパイロットになるFECの隊員たちですが、幹部自衛官もほぼ同じコースを辿ることになります。唯一違う点は、FECの場合、教育を終えて部隊勤務を開始してから、幹部候補生学校に入校して幹部自衛官に任官するという点くらいです。

 階級の昇任具合でお話しすると、陸曹の最下等階級である3等陸曹でFECに入校して、中期教育が終わる前に2等陸曹に昇任します。部隊勤務が始まるころには1等陸曹に昇任して身分は陸曹操縦学生から飛行幹部候補生となります。そして幹部候補生学校に入校するころには陸曹長となり、幹部候補生学校を卒業して部隊に戻る頃には3等陸尉へ任官します。その後は、パイロットとしての知識や技術を向上させ、立派なパイロットになるために、日々努力を重ねるといいます。

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明野航空学校に所属する各種ヘリコプター。左からUH-60JA、AH-1S、AH-64D(矢作真弓撮影)。

 日本のヘリコプターパイロットの約7割が自衛隊に所属しています。自衛隊全体でのヘリコプターパイロットは陸自が約7割と最も多く、陸自内でのヘリコプターパイロットの約8割がこのFEC出身者です。約7割×約7割×約8割でイコールすると、日本の空を飛ぶヘリコプターパイロット全体の約4割がFEC出身者となるのも興味深いお話です。

 ちなみに、陸自には唯一の固定翼機となるLR-2連絡偵察機も配備されていますが、陸自は自前での固定翼パイロットの教育機関を持っていないため、山口県に所在する、海上自衛隊小月航空基地に隊員を派遣して、海上自衛隊にその養成を依頼しているそうです。

【了】

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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コメント

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1件のコメント

  1. >たとえば、中学校卒業と同時に15歳で高等工科学校へ入校した場合、20歳で陸曹になれるので

    違います。
    高等工科は横須賀での3年間を前期
    その後の1年を後期と位置づけていて合計4年です。

    高等工科卒業(横須賀の前期過程終了)と同時に陸士長に任官し
    各方面隊にある陸曹教育隊に教育入隊して約3ヶ月間
    「生徒陸曹候補生課程」を履修します。
    その後、各部隊へ配置され
    それぞれの部隊から各職種の特技区分ごとに「初級陸曹特技課程」に入校し技術陸曹としての専門分野の教育を受けます。
    教育隊と職種学校での後期過程1年を経て後に
    陸曹(3曹)任官です。
    したがって最短で18歳の陸士長、19歳の陸曹(3曹)です。

    18歳の陸士長と19歳の3曹といえば
    高等工科出身者しかいません。