沈座した潜水艦の乗員を救え! 万一に備える海自最新潜水艦救難艦「ちよだ」とDSRV
出る方法はふたつ、「エスケープ」と「レスキュー」
潜水艦の乗員を助け出す方法には、「エスケープ」と「レスキュー」があります。
DSRVを使用するのが「レスキュー」です。先述の方法を用います。海自の潜水艦には約80名の乗員が配置されていることから、母艦と潜水艦の間を5~7回往復すれば全員助けられる計算となります。ただし、1回の往復で4時間~5時間の時間が必要とされるので、全員を救助するのにかかる時間は概ね40時間程度と見積もられています。気象条件や海流などの状況も大きく影響するため、これ以上時間がかかる可能性もありますし、潜水艦が斜めに倒れるなどして、「メイティング」が不可能なケースも考えられます。
そこで採られるもうひとつの方法が「エスケープ」です。沈座した潜水艦から、個人用脱出用具を被り、乗員が自力で潜水艦ハッチから脱出し、泳いで海面を目指します。脱出用具といっても、簡易の救命具を着用するだけです。
潜水艦艦内は地上と同じ1気圧に保たれています。よって海中から潜水艦の外へ飛び出すならば、沈座している深度まで体を加圧しなければなりません。ですが、潜水艦内にはそのような設備はなく、深度300mであろうとも、無理やり飛び出すわけですから、人体は水圧の影響を受け、無事に脱出できても潜水病になる可能性があります。最悪の場合は脳や体に障害が残り、命は助かったとしても、完全なる社会復帰は難しいと言われています。途中で溺れてしまうかもしれません。よって、「エスケープ」は最終手段として考えているにすぎず、基本的にDSRVを用いるようにしています。
2018年8月現在、海自潜水艦部隊は、22隻体制へと拡大改編を行っている最中です。かつて存在していたものの、廃止された第6潜水隊も、今年3月12日に復活しました。
このように潜水艦の数が増えていけば、やはりそれに比例し、事故の確率も高くなります。こうした不測の事態に、潜水艦救難艦は期待されています。
【了】
Writer: 菊池雅之(軍事フォトジャーナリスト)
週刊誌カメラマンを経てフリーの軍事フォトジャーナリストとなる。安全保障をテーマに世界中を回り、週刊誌や専門誌等に執筆。最近ではテレビやラジオ出演、講演などもこなす。「イチから分かる自衛隊最前線レポート」(EX大衆・双葉社)、「最新国防ファイル」(夕刊フジ)など連載を多数持つ。
>全員を救助するのに概ね40時間程度。気象条件や海流などの状況で、これ以上時間がかかる可能性もあり。、斜めに倒れるなどして、「メイティング」が不可能なケースも。
別の方法考えたほうが良いようなな気がする。
映画化希望!