陸自、輸送船検討の背景と課題 浮かんで動くエレベーター「L-CAT」は候補なるか?

陸上自衛隊が独自の海上輸送能力を獲得したい意向である旨が報じられました。どのような船が導入されるのか、現状を考えると、非常にユニークな特徴をそなえる輸送艇「L-CAT」が候補に挙がるかもしれません。

陸上自衛隊が輸送船を? その背景

 2018(平成30)年5月、陸上自衛隊が輸送艇の導入を検討しているという内容の報道が世間の注目を集めました。これが実現すれば、陸上自衛隊が創設されてから初めて本格的な輸送艇を運用することになります。

 しかし、なぜ陸上自衛隊はそのような能力を必要としているのでしょうか。

Large 180524 lcat 01
フランス海軍などが採用する水陸両用高速揚陸艇(EDA-R)、L-CAT(画像:フランス国防省装備総局)。

 これまで陸上自衛隊は、その名のとおり陸上での戦闘をメインにすえた能力の構築を行ってきました。しかし、近年になって中国の海洋進出が活発化すると、尖閣諸島を含めた九州・沖縄周辺の島々を防衛する、いわゆる島しょ防衛の重要性が増していきました。こうした理由から、陸上自衛隊は水陸機動団といった島しょ防衛の専門部隊を創設するなど急速に「海から陸」を目指す組織に変容しつつあります。今回の輸送艇の導入検討も、そうした動きの一環と考えられます。

 島しょ部をめぐって有事が発生しそうになった場合、本州から沖縄、沖縄から島しょ部へと陸上自衛隊の部隊を輸送する必要があります。従来はこうした部分について海上自衛隊のおおすみ型輸送艦や民間の大型船舶などに頼らざるを得ませんでしたが、おおすみ型は全部で3隻しか配備されていないうえに、おおすみ型も民間船舶も基本的に本格的な車両や物資などの積み込み、積み下ろしは整備された大きな港でしか行えません。また、海上自衛隊も人員や物資を島しょ部に輸送可能な輸送艇1号型を保有していますが、搭載量に限界があるほか、戦車など重量の重い戦闘車両を輸送する能力はありません。そこで、陸上自衛隊としては本州や展開先の島しょ部にある小さな港などでも装備の積み込み、積み下ろしが可能な独自の能力獲得の必要性を感じたのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は推察します。

 また、陸上自衛隊は現在沖縄本島より数百キロ南西にある離島への部隊配備を加速させていて、現在までに与那国島(沖縄本島から約500km)への配備が完了し、さらに石垣島(沖縄本島から約400km)や宮古島(沖縄本島から約300km)への部隊配備も計画されています。こうした離島への部隊配備にともない、沖縄と離島、離島と離島とを結ぶ独自の輸送能力を整備して、平時からの部隊運用をより効率化しようと考えているのかもしれません。

この記事の画像をもっと見る(4枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

5件のコメント

  1. 言っちゃ悪いが、旧軍の時から海軍さんの兵員輸送に関しては”アテにできない”部分が多いから…確かに兵員や物資の輸送や輸送船の護衛より対艦戦闘の方が華やかで士気の高さも違うけど、それでガダルカナルを始めとしてどれだけの陸軍将兵が苦労したか…果ては、独自で世界初の強襲揚陸艦「神州丸」に「あきつ丸」や輸送潜行艇の「まるゆ」まで装備しなければならなかったわだかまりを捨てるには難しい……

  2. L-CAT、面白いマシンですね。
    運用は施設科に船舶施設科を立ち上げて…
    普通に輸送科でしょうけど。

  3. せっかく自前の輸送船を持ってもエスコートを海自に頼らなければならないなら運用の自由をやっぱり確保できないような気がしてきますね。将来には陸自所属の水上戦闘艦艇が必要になってくるのではないでしょうか。

  4. L-CACとは別なのね

  5. currency-trading-brokers.com/forex-comparisons-ratings-reviews-malaysia.html Kajian-Semakan-Gambaran-Tinjauan asing valuta-mata-wang-bursa-saham-stok-dana devisa-tukaran-penukaran-pertukaran syarikat.