電車のパンタグラフ「ひし形」が「く」の字に コストだけではない普及の理由

速く走れば走るほどメリットが増える理由

 しかし、シングルアーム式の利点はコストだけではありません。とくに新幹線のような高速列車では、コスト以外にも大きな利点があります。

Large 180807 singlepanta 02

拡大画像

ひし形パンタグラフは細い棒を複数組み合わせた構造。部品の数も多くなる(2016年8月、草町義和撮影)。

 ひし形は細い棒を何本も組み合わせていますから、走行中に受ける空気抵抗も大きくなります。列車が速く走れば走るほど、空気抵抗によって生じる騒音も大きくなってしまいます。一方、シングルアーム式は部品が少ないため空気抵抗も小さく、ひし形に比べ騒音を抑えることができるのです。

 なお、架線は一定の高さで設置されているわけではなく、踏切の部分では高くしたり、トンネルの部分では低くしたりしています。列車も速くなればなるほど、走行中の振動などで架線からの高さが変化します。

 このため、パンタグラフは架線の高さが変化しても、集電舟が架線からできるだけ離れないようにするための性能が求められます。ひし形は複数の細い棒で集電舟を支えていることから高さの変化に追随しにくく、逆にシングルアーム式は集電舟を支えるポイントが少ないため追随しやすいという利点があるのです。

 ちなみに、シングルアーム式パンタグラフ自体は1950年代にフランスのメーカーが開発し、欧州では早くから普及していました。日本でシングルアーム式パンタグラフを搭載した車両が多数登場するようになったのは1990年代に入ってから。これはフランスのメーカーが持っていたシングルアーム式パンタグラフの特許が1980年代後半に切れ、日本のメーカーが製造しやすくなったことも背景にあるようです。

【了】

この記事の画像をもっと見る(3枚)

最新記事

道路交通情報(外部サイト)

  • 「最新の交通情報はありません」

コメント

7件のコメント

  1. パンタグラフの表面積が減るため、着雪も減る結果菱形より雪に強いとも言われているが、ここてはそこに触れられていないね。

  2. 実物は優れた性能だが、鉄道模型のシングルアームパンタグラフはシンプルな形ゆえに破損しやすい。

    • あれも昔は基部に金属の板バネを仕込んでパンタを持ち上げてたが、21世紀になってからは自立するようになった。
      地味に進化してる。
      Nゲージに復帰して驚いたことの一つ。

  3. 実際には追随性は良いものの、電圧の低く高密度運転の日本では安定した集電力を得られにくいという欠点があるため開発、普及が遅れたというメーカーの説もある。

  4. 京阪13000系のように、新造ながらパンタはひし形の旧車両のものを再利用したケースもある。
    特急運用が少なくそこまでの高速運転を必要としない車両だからだろうか。

  5. シングルアーム式パンタグラフといえばフランス国鉄のCC6500型ELだな。
    「ル・ミストラル」の牽引機と聞けば思い浮かべる人も多いのでは

  6. なるほど、パンタグラフが1本で軽いと架線追従性が良くなり、空気抵抗による騒音も減るのですね。勉強になりました。
     ただ、「車両の軽量化を図ることも可能」に続くご説明には疑問も。もちろん軽くはなるでしょうが、車両1両全体に比べれば微々たる重量で、「レールに与えるダメージも少なくなり、線路のメンテナンスにかかる費用も抑えることができる」ことが、はっきり分かるレベルとは思えないのですが。