【空から撮った鉄道】東京湾埋立地の鉄道点描 新幹線からモノレール、貨物の車両たち

東京湾は東京が首都として発展するたびに埋立地が誕生していき、やがて線路が敷かれました。そのうちのひとつ、大井埠頭の一帯は貨物ターミナルや新幹線の基地など首都を支える鉄道の拠点が集中しています。

撮影の障壁は羽田空港

 東京湾は江戸時代から埋立地が造成され、明治以降も次々と埋立地が誕生していきました。終戦後、埋立地の造成は急ピッチで進み、羽田空港周辺もみるみるうちに海から土地へと変わっていったのです。そのうち「昭和島」と「大井埠頭(ふとう)その1」と呼ばれる人工島には、鉄道の拠点が設けられました。

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大井埠頭とその周辺には、在来線貨物と新幹線、モノレールの拠点がある。写真は東海道新幹線の大井基地(2013年5月、吉永陽一撮影)。

 昭和島には東京モノレールが南北を貫く形で跨座式のレールが敷かれ、1964(昭和39)年のモノレール開通に合わせて車両基地も設けられました。

 一方、物流の拠点となる大井埠頭には、国鉄の大井操車場が設置される予定でした。しかしその後、貨物列車のコンテナ化が進んだため、コンテナ貨物専用の設備を備えた東京貨物ターミナル駅が1973(昭和48)年に開業。その西隣には東海道新幹線の車両基地も建設されました。

 これらの拠点は2012(平成24)年に『空鉄 ―鉄道鳥瞰物語―』(講談社)を上梓してから、次の企画があることを見越して早い段階で空撮したいと考えていました。しかし、その場所は羽田空港のすぐ北側。私はほかの空撮と同様、できるだけ低めの高度で撮影したいと思っていましたが、そうなると羽田の離着陸機とほぼ同じ高度になり、そう簡単には撮影できなかったのです。

 そこで、離着陸の少ない早朝を狙うことに。朝7時より前なら比較的長く撮影できるとのことで、日の長い夏にしました。ただ早朝ゆえに太陽の角度は低く、色味も昼間とは異なり黄色味がかっています。影もまだ長い。そんな悪条件のなかでの撮影決行でした。

 いつもは軽飛行機で空撮していますが、軽飛行機が早朝に離陸できる飛行場は都内にありません。2013年5月、今回はヘリコプターを使うことにして、大井に近い新木場の東京ヘリポートから飛び立ったのです。

扇状に動くモノレールのポイント

 パイロットは離陸直前の6時台に羽田の管制官とやりとりし、いまならOKとのことで新木場から飛び立ちます。「ミッションポイント」へは5分としないうちに到着。近くにヘリポートがあるとコストも抑えられるから助かります。

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新木場から大井埠頭へ。鉄道の車両基地があるだけでなく物流の拠点だ(2013年5月、吉永陽一撮影)。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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