装甲車、警察はなぜ自衛隊のものを流用しないのか 独自開発を必要とした理由(写真15枚)

警察でも「装甲車」は広く使用されていますが、たとえば自衛隊のものを流用したという話は聞きません。「装甲車」とは言いますが、見た目もかなり違います。なぜ、各々で独自開発という非効率的なことをしているのでしょうか。

街中でもわりと見かける装甲車

 装甲車はけっして軍隊=ミリタリーの世界だけの専用装備ではなく、一般的にも広く使われている車両です。

 こういってしまうと、日本とは別のどこか遠い、たとえば中東やアフリカなどの話に聞こえるかもしれませんが、日本においても警察はもとより、消防(耐火性装甲消防車)や一部の警備会社(現金輸送車)でも運用されており、けっしてまれな車両ではないのです。

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陸上自衛隊の96式装輪装甲車。軍用のため、乗り心地よりも悪路走破性と耐弾性を重視している。警察の装甲車と比べて最低地上高が高いのに車高は低い(柘植優介撮影)。

 日本においては、自衛隊の次に多数の装甲車を用いているのは警察ということになります。マンガやアニメなどでは軍用の装甲車に赤色灯を付け、側面に「警視庁」や「○○県警」などと入れて警察仕様にしているものが見受けられますが、実際にはそのようなものは存在せず、100%の割合で警察専用の装甲車を開発、運用しています。

 なぜ、そのような非効率なことをするのでしょうか。ネット上においては「警察も自衛隊の装甲車を使えばいいのに」という意見もあるようですが、警察がわざわざ警備専用の装甲車を作るのには、もちろん意味があります。

自衛隊の装甲車とは

 そもそも、軍と警察の装甲車の違いは運用思想から生じています。

 軍用の装甲車は戦場で使われるため、基本的に不整地走破能力や耐弾性を重視します。そのため装軌式(いわゆるキャタピラー式)が存在するのであり、また迷彩塗装で、偽装(カモフラージュ)や増加装甲を取り付けられるように車体の各所に様々な出っ張りが設けられています。

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陸上自衛隊の73式装甲車。装軌式で背が低く前方機銃を装備する。装軌式は装輪式と比べて速度は遅く、整備性も悪いが、悪路走破性が抜群に高い(柘植優介撮影)。
陸上自衛隊の87式偵察警戒車。ゴムバンドで偽装網を固定し、砲塔後部のラックには雑具を載せている(柘植優介撮影)。
陸上自衛隊の軽装甲機動車。擬装網や各種装具を取り付けやすいよう突起が多い。ボンネットと車体後部にはヘリ輸送のためのスリング環が設けられている(柘植優介撮影)。

 加えて舗装路を走ることよりも、泥濘地や積雪地などを走行することを想定しているため、装輪車についても不整地走破能力が劣る6×4や4×2はほとんどなく、6×6(6WD)や4×4(4WD)の全輪駆動タイプで、現在では8×8(8WD)が主流です。

 さらに防御上不利となるガラス窓は極力減らされ、最低限必要な場所のみとされています。そして頻繁に車体上面へ登ることを想定しているため、車体の至るところに足掛けが設けられています。

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コメント

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4件のコメント

  1. F-3型は栃木県警で余生を送ってたそうだけど、引退ですか。
    警察博物館で保存してほしいな。
    あさま山荘事件のときに猟銃で撃たれた跡があばたのようになっていたそうで、銃というものの恐ろしさの教材にもなるでしょう。

    アメリカの事情にも触れられているけど、MRAP等の払い下げは警察力の過剰化との批判もあるらしい。

  2. 簡単に言えば、「警察官」と「自衛官」は違うのと同じ

  3. 「学生運動が華やかなりし頃」

    何が華やかなの?
    ただの暴動行為でしょ
    身勝手な話ですわ

  4. 配信を停止してください