航路ではなく「道路」、全国に残る渡し船のナゾ 船を「呼び出す」独特の作法も

交通が発達した現在でも、全国に渡し船が残っています。なかには、「道路」の一部として運航されているものも。船なのに「道路」とはどういう意味で、どのような船が運航されているのでしょうか。

市営の小さな渡し船は観光資源に 県境越えの例も

 現在も残っている「道路」としての渡し船、その実態はどのようなものでしょうか。愛媛県松山市の「三津の渡し」と、埼玉・群馬県境にある「赤岩渡船」を例に見てみましょう。

「三津の渡し」は松山市の北部、伊予鉄道高浜線三津駅に近い港町の一角にあります。港の入り江を横切って、北側の港山と南側の三津を結ぶわずか80mほどの航路は、室町時代にあった港山城の物資や食料調達の手段として開かれたのが起源といわれます。現在は年中無休で運航され、年間約4万人が利用。松山市における観光スポットのひとつにもなっているようです。

 この「三津の渡し」を管理・運営するのは松山市です。市道「高浜2号線」の一部として扱われており、運賃は無料。渡し船の別名「古深里の渡し」にちなんで「こぶかり丸」と名付けられた定員10名ほどの小さな船が、毎日7時から19時まで随時運航する形態をとっています。風情ある漁港の船溜まりと港町を眺めながら1分ほどで両岸を結びますが、歩けば入り江の奥まで大回りしなければなりません。

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愛媛県松山市の「三津の渡し」、三津側の乗り場(石川大輔撮影)。

 一方の「赤岩渡船」は、埼玉県熊谷市葛和田(くずわだ)と群馬県千代田町赤岩のあいだを流れる利根川を渡ります。こちらも、上杉謙信の文献にも登場するほど長い歴史を持った渡し船。日本最大規模の河川である利根川の本流には、かつて多くの渡し船があったのですが、交通手段や架橋技術の発達で姿を消した現代では希少な存在です。

 現在の「赤岩渡船」は、群馬県の委託事業として千代田町が管理しています。主要地方道(県道)「熊谷・館林線」の一部とされており、近隣に橋がなく、架橋計画も具体化しないため現在まで存続してきました。こちらでは動力船の「千代田丸」「新千代田丸」で毎日おおむね8時30分から17時ごろまで運航され、運賃は無料。地域住民や観光客など、年間約2万人が利用しています。

 いずれの渡し船も、運航時間帯が決まっていますが、年間利用者数から考えると、1日の利用者数は決して多くはありません。そのため、「お客さんがいるとき」に限っての運航とされており、船が対岸にある場合は、それぞれの方法で船を「呼び出す」必要があるのです。

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