敦賀~博多貨物定期船で物流は変わるか 海上輸送の欠けた1ピース、近海郵船の勝算は

13年ごしに結ばれるその効果は?

 とはいえ、これまで13年間にわたり航路がなかったのには、それなりに理由があるはずです。採算面などが考えられますが、加えて冬の日本海の荒波は歌にうたわれるほど激しいものです。この点について近海郵船の中村尊子 定航マーケティング室副部長は「吹雪や時化(しけ)によるリスクはワンシーズンで数回程度はあるでしょう。しかし、太平洋側も台風で運休することがあり、リスクとしては変わりません」と説明します。

「かつての運航会社さんが破たんしたのは、スピードを重視して燃料費のかかる船を使用していたなか当時は燃料費が高騰しつつあったことと、いまもそうなのですが、博多から本州への物量が少ないことなどが挙げられます。ただ今回の計画を進めるなかで、九州の荷主さんから『あの航路、いまあったらよかったのにね』という声もたくさん聞かれました。それはモーダルシフトやドライバーさん不足などで世の中のニーズが変わってきたからで、船での輸送に切り替えを考えていただけるチャンスになるのではないかと考え、今回踏み切ったわけです」(近海郵船 中村さん)

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九越フェリー(当時)のフェリー「れいんぼうらぶ」(2001年9月21日、草町義和撮影)。

 では今回、近海郵船が改めて敦賀~博多航路を開設することにより、どのような効果が見込めるのでしょうか。これについて福岡市港湾局は「モーダルシフト促進への貢献」「物流ネットワークの複線化」「全国主要都市へのアクセス向上」という3つの効果を挙げています。

 ここでいう「モーダルシフト」とは、端的に言えば交通や輸送手段の転換を意味し、特に貨物輸送をトラックから船や鉄道に変えることをいいます(三省堂『大辞林』第三版)。そうすることで物流を高効率化し、交通渋滞の緩和や環境保護、昨今深刻化するドライバー不足への対応などを図るというもので、たとえば国土交通省は物流のモーダルシフトによる低炭素化を推進するため、事業として補助金の交付などを実施しています。

「たとえば、名古屋市役所から福岡市役所まで16トンの貨物を陸送する場合、移動距離は770kmになります。一方、名古屋から敦賀の港まで来ていただいて私共の船で博多まで輸送しそこから福岡市役所まで向かった場合、CO2排出量を試算したところ、陸送に比べ40%強削減できます」(近海郵船 中村さん)

 ふたつ目の「物流ネットワークの複線化」とは、平時の物流安定化はもちろん、災害時にも物流を途絶えさせないための輸送網の構築を意味します。陸上輸送に対する海上輸送という観点はもちろん、太平洋側や混雑の激しい瀬戸内の海上輸送に対する日本海側の海上輸送という観点からも複線化が図られることになります。さらには、いざ被災しても、陸上輸送に比べ復旧が早いのも利点です。

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コメント

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2件のコメント

  1. 素人ですが。

    西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨)で高速道路が寸断された実例も有りますし、今後の発展に期待したいです。

  2. らぶ、べるの後継のニューらぶ、ニューべるも客室を簡素化したRORO寄りの生き残り作戦で同九越、東日本の日本海航路に就航しましたが合理化の並みには勝てずに、さんふらわあ商標の大洗、苫小牧の深夜便に転属されましたね。
    不幸にも転属先の会社の航路では火災に見舞われましたが道内の造船所にて修復工事を経て復活しました。
    確かに言われるほど日本海は荒天ばかりではなく逆に好天でも通年うねっている太平洋側より計画はたてやすいのではないでしょうか
    日本海側から道内を航路の直線で結べば太平洋側より優位なのは確かでしょうね
    例えば新日本海フェリーの舞鶴と小樽航路は高速フェリーを用いることで所要20時間を実現しましたし、列車にしても昔は大阪と青森を直通する昼と夜の列車がありました。
    また、海のバイパス構想で発足した瀬戸内海航路などは春先の濃霧はあるものの通年時化も少なく安定輸送と言うところでは道路にひけをとらない輸送手段だとおもいますね。
    課題としては互いの手段が気象や災害に影響を受けた時の振り替え輸送の提携の問題でしょうかね