米×サウジが切っても切れないワケ 記者殺害で浮かび上がる両国の複雑な関係とは?

サウジアラビアとアメリカの深い関係

 アメリカ国務省によれば、サウジアラビアとアメリカが本格的な外交関係を結んだのは1940年代で、それから70年以上が経過した現在では安全保障や経済、さらに文化や教育など多くの分野において両国は深いつながりを築いています。

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サウジアラビアの首都、リヤドの夜景(画像:Hany Musallam/123RF)。

 なかでも安全保障に関しては、サウジアラビアの財力などを背景として、その関係が深化しています。そもそもサウジアラビアは米国と同盟関係にある国で、加えてアメリカにとっては最大級のFMS(対外有償軍事援助/兵器やその運用教育などを有償で与える米国のプログラム)の相手国でもあります。最近では2017年にアメリカのトランプ大統領とサウジアラビアのサルマン国王との間で1100億ドル(約11兆円)のFMSに関する合意が結ばれ、これまでに145億ドル(約1兆4500億円)の契約が履行されています。また、アメリカの高性能な地上配備型弾道ミサイル防衛システムである「THAAD」も、2017年にサウジアラビアへの輸出が許可され、ミサイル発射装置や迎撃ミサイル、レーダーや指揮通信装置などを含めたその総額はなんと135億ドル(約1兆3500億円)にものぼります。

 こうした大規模なFMSが結ばれる背景のひとつとして、サウジアラビアが置かれた環境が挙げられます。サウジアラビアは北側でイラクと、東側ではペルシャ湾をはさんでイランとそれぞれ隣接しています。さらに、現在でも戦闘が続いているシリアとの距離も遠くありません。このことから、サウジアラビアはアメリカにとって、中東におけるさまざまな軍事活動や対テロ作戦上極めて重要な位置にある国であるということが言えます。

 また、サウジアラビアがアメリカと長年敵対関係にあるイランと隣接し、かつサウジアラビア自身もイランとの関係が悪いことも、アメリカがサウジアラビアを重要視する理由のひとつでしょう。つまり、サウジアラビアとの関係が深化すれば、アメリカは中東におけるイランの活動ににらみをきかせることができ、かつイラクやシリアにおけるISなどをターゲットとする対テロ作戦もサウジアラビアと協力しながら効率的に実施することができるわけです。実際に、サウジアラビアはアメリカ主導の対IS有志連合の一員として、財政面や地域の安定化といった側面から有志連合を支援しています。

 こうしたアメリカとサウジアラビアとの深い関係が、今回の事件に関してアメリカを複雑な立場に立たせている大きな要因のひとつとされています。

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