軍艦フロムカナダ、艦内重要区画まで大公開 「カルガリー」艦長に聞くその目的、意義(写真20枚)

カナダ海軍と海上自衛隊との関係はどうなっていくの?

 カナダ海軍がアジア太平洋地域におけるプレゼンスを示していくこととなれば、気になるのは日本の海上自衛隊との関係です。これについてサルテル中佐は「カナダ海軍と海上自衛隊との協力関係については、これをより発展、深化させていきたいと思っています。具体的には、艦艇同士や組織同士での協力を増やしていきたいと思っています」と述べています。

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カナダ海軍の補給艦「アストリクス」。民間のコンテナ船を改造したもの(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。

 この文脈に照らせば、今回の「カルガリー」と「アストリクス」の日米共同演習への参加や訪日は、日本とカナダのあいだの相互理解を深めることとなり、まさしくカナダ海軍と海上自衛隊との協力関係を発展させるための重要なできごとだったといえます。

 また、この点を考えるにあたって筆者(稲葉義泰:軍事ライター)が重要だったと考えるのが、2017年に実施された海上自衛隊とアメリカ海軍、そしてカナダ海軍の間で行われた共同演習です。実は、この演習に参加したカナダ海軍の艦艇というのは、機密情報の塊である「海の忍者」こと潜水艦の「シクティミ」だったのです。

 潜水艦が他国の海軍と共同演習を行うというのは、水上艦艇が同様の演習を行う場合と比べて意味合いが異なってきます。海のなかを密かに進みつつ、平時から有事にかけて情報収集を行なったり、必要とあれば敵艦艇を攻撃したりすることを任務とする潜水艦にとって、誰にも発見されないための隠密性は最も重要な要素です。そのため、自国の潜水艦が海中を進む際にどのような音を出しているのかといった情報を他国に探られるのは、そうした潜水艦の特性上非常に大きな問題となります。

 つまり、裏を返せば潜水艦が他国と共同訓練を行う場合、その相手国は自国にとって信頼のおける国であるということを意味していると言えるでしょう。ゆえに、先述した日米合同演習への潜水艦「シクティミ」の参加は、カナダ海軍が日本の海上自衛隊をどう捉えているのかを考えるための、重要な指標になるというわけです。

 今回の取材では、通常は公開されないような艦艇の内部を細かく取材をすることができましたが、一層厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境を考えれば、カナダが日本をどのようなまなざしで見ているのか、今回の公開はそれを反映したものだったといえるのかもしれません。

【了】

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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