姫路沖で複数社が火花「家島諸島航路」 競合ゆえの利便性と「落とし穴」、その将来は
離島航路では珍しい「競合」が将来に影を落とす
このように離島航路では珍しく複数社が競合する家島諸島への航路ですが、内実は決して安泰ではありません。2015(平成27)年度には年間、家島航路を約40万4000人、坊勢航路を約27万3000人が利用しているものの、各島における主力産業の縮小や少子化、高齢化の影響により、利用者は減少傾向。また、航路を運営する各社とも、燃料費の高騰などもあり、厳しい経営が続いています。
もちろん、他地域でもこうした厳しい状況は同様で、国も本土と離島を結ぶ航路を維持するための補助金を設定しています。しかし、それには「ほかに交通機関がないこと」「ひとつの離島に複数航路が存在する場合、起点港を異にし、終点が同一市町村にない航路」といった条件があり、家島諸島航路のように同一航路で複数の事業者が並立している現状では、補助を受けることができないのです。
いま、家島諸島では将来にわたって航路を維持していくにあたり、行政サイドも航路の維持に向けて住民から意見を聞くなど、対策に乗り出しています。住民からは「乗船券や定期券の各社共通化」を求める意見が多く寄せられていますが、各社における収入配分の問題など、実現には様々な問題があるようです。
国土交通省 神戸運輸監理部は2017年に発表した家島諸島航路に関する調査報告書で、家島諸島全体の人口が今後さらに減少し、「航路の利用者数が急激に減少する時期が早晩到来することが不可避」と予測。そのようななか、「各社ともに一社化して国からの補助を受けることができれば良いと考えているが、円満に一社化するのは難しい状況にある」としています。今後も「競合」が続くのか、それとも共倒れを防ぐべく「協調」に舵を切るのか、家島諸島航路はいま、大きな壁に直面しています。
【了】
※記事制作協力:風来堂、石川大輔
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