「JR・相鉄直通線」、開業後のダイヤはどうなる? 今ある資料から予想してみた

相鉄本線西谷駅からJR東海道貨物線横浜羽沢駅付近までの区間に建設されている「相鉄・JR直通線」。開業後のダイヤはいったいどうなるでしょうか? 現在公表されている資料をもとに予想してみました。

東京都心に乗り入れていない唯一の大手私鉄

 2019年2月26日に運賃の認可申請が出され、2019年度下期開業予定といよいよ間近に迫ってきた相模鉄道(相鉄)の新線「相鉄・JR直通線」。相鉄は関東大手私鉄で東京都心に乗り入れる列車を唯一運転していませんが、この新線が開業すると都心への乗り入れが実現します。いままで約1時間かかっていた二俣川~新宿間も、44分(ラッシュ時)まで短縮。相鉄線の沿線価値向上も期待されています。

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西谷駅と羽沢横浜国大駅を結ぶ「相鉄・JR直通線」のトンネル(2016年12月、草町義和撮影)

 開業を間近に控えて気になるのは運行ダイヤ。どのくらいの時間がかかり、どのくらいの本数が都心まで乗り入れるのでしょうか? 2019年3月21日時点で公表されている情報から、大胆に予想してみました。

貨物線に乗り入れて東京都心に直通

「相鉄・JR直通線」は、相鉄の西谷駅(横浜市保土ヶ谷区)からJR東海道貨物線の横に建設される羽沢横浜国大(はざわよこはまこくだい)駅(横浜市神奈川区)を経由し、JR東海道貨物線に接続する2.7kmの路線です。元々は「神奈川東部方面線」と呼ばれる鉄道建設事業計画の一部分で、今回の事業も2022年度下期開業予定の「相鉄・東急直通線」と併せた事業となっています。

 路線の建設は2010(平成22)年3月に始まり、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が担当。「相鉄・JR直通線」開業後は西谷駅から羽沢横浜国大駅については線路使用料を鉄道・運輸機構に支払いながら相鉄が運行し、羽沢横浜国大駅から東側はJR東日本によって運行されます。

運行計画としては羽沢横浜国大駅からJR東海道貨物線に直通し、武蔵小杉駅(川崎市中原区)付近でJR横須賀線に乗り入れ、湘南新宿ラインと同じく西大井駅(東京都品川区)の北側にある蛇窪信号場から大崎支線を経由して大崎駅(同品川区)へ。そして埼京線(山手貨物線)に乗り入れて、新宿以遠の埼京線の駅まで運行される予定です。

「相鉄・東急直通線」は、西谷駅から羽沢横浜国大駅までは「相鉄新横浜線」(6.3km)の一部となり、羽沢横浜国大駅から新横浜駅(横浜市港北区)までの4.2kmと新横浜駅から日吉駅までの「東急新横浜線」(5.8km)と併せて最終的に12.7kmの路線となります。。総工費は「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急直通線」あわせて4022億円が見込まれているとのことです。

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「相鉄・JR直通線」と「相鉄・東急線」の路線図(国土地理院の地図を加工)。

 また、「相鉄・JR直通線」の開業にあわせた新車両の導入も進められており、相鉄ではJR直通用の12000系電車が6編成新造される予定です。12000系電車には埼京線、川越線、りんかい線の駅の行き先が表示されるようになっています。またJR側でも埼京線・川越線用のE233系電車7000番台が7編成新造される計画です。

 ちなみに、「相鉄・JR直通線」の開業時期は2019年度下期とされていますが、複数のメディアは2019年12月の開業予定と報じています。

ネックは線路の合流点とライナー列車

 最初に運行形態を考えます。ここで参考になるのが、2019年1月1日付け神奈川新聞の報道です。それによると、日中は新宿駅での折り返しが基本。朝ラッシュ時は時間を要する折り返し運転を避け、川越方面への直通も考えていることが報じられています。今回のダイヤ予想も、これを前提に考えていきます。なお、相鉄線内については具体的な運行計画が想定できないため、今回は考えないものとします。

 次に所要時間についてです。参考になるのは、整備効果として朝ラッシュ時に二俣川駅から新宿駅までが44分で運行されるというものです。このうち二俣川駅から西谷駅までは5分、武蔵小杉駅から新宿駅までは湘南新宿ラインの普通列車で22分かかります。

 朝ラッシュ時にJR東海道貨物線を経由して運行される「湘南ライナー」や「おはようライナー新宿」の場合、羽沢横浜国大駅付近から武蔵小杉駅まではおおよそ13分程度かかっています。羽沢横浜国大駅では運転士が交代するはずですので、停車時間は少し多くなり、これによって西谷駅から羽沢横浜国大駅までが3分程度と推測されます。距離も2.1kmですので、妥当な所要時間と言えそうです。

 では、この前提条件を元に朝ラッシュ時と日中のダイヤを想定してみます。

 朝ラッシュ時は運行本数が毎時4本程度とされていますので、今回は武蔵小杉駅を7時から9時に通過する上りダイヤを考えてみます。なぜ武蔵小杉駅かというと、この本数を運行するために最もネックとなるのが、横須賀線の武蔵小杉駅南側に位置する東海道貨物線が合流するポイントから、次の西大井駅の先にある蛇窪信号場までの運行本数だからです。

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Writer: 鳴海 侑(まち探訪家)

1990年、神奈川県生まれ。私鉄沿線で育ち、高校生の時に地方私鉄とまちとの関係性を研究したことをきっかけに全国のまちを訪ね歩いている。現在はまちコトメディア「matinote」をはじめ、複数のwebメディアでまちや交通に関する記事を執筆している。

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