名古屋の「城北線」に乗る 1時間に1本、大都市の鉄道なのに「ローカル線」の理由
国鉄時代の「ルール」が運営を圧迫
このころの国鉄新線は、日本鉄道建設公団(鉄道公団)が建設し、完成した線路を国鉄に貸していました。大都市の新線については、国鉄が数十年かけて鉄道公団に支払う賃借料で建設費を回収し、回収が完了したら国鉄に線路を譲り渡すルールだったのです。
JR東海も、城北線を運営するなら鉄道公団に賃借料を払わなければなりません。その金額は年間数十億円になるため、採算を取りながら運営するのは困難でした。
そこでJR東海は、まだ工事に着手していなかった部分の工事費を減らし、それにより賃借料が減るようにしました。勝川駅に乗り入れる部分の工事は行わず、レールは新幹線で使われていた中古を再利用。電化も断念してディーゼルカーを走らせることにしました。
こうして城北線は1991(平成3)年から1993(平成5)年にかけて開業しましたが、路盤がほとんど完成した段階で工事費を削減したため、賃借料はそれほど安くなりませんでした。JR東海の近年の有価証券報告書によると、同社は毎年約40~50億円の賃借料を鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧・鉄道公団)に支払っています。
ただ、賃借の終了期限は2032年度の予定ですから、13年後には城北線の施設がJR東海のものになります。運営を圧迫している賃借料を払う必要もなくなり、資金に余裕ができることでしょう。この段階で電化や中央本線勝川駅への乗り入れなど、城北線を便利にするプロジェクトが立ち上がるかもしれません。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
仮に勝川駅の中央線までのアプローチと名駅までの乗り入れが果たせたとしても、沿線のほとんどのエリアは既に他の鉄道やバスで都心へのアクセスも確保されているし、クルマ利用率の高さ、運賃や高架駅が故のバリアフリーの不便さを考えると敢えて利用があるのか不透明。
城北線は多数の客が向かいたい方向に向かってないからなぁ。
ここが愛環や伊勢鉄と違うところ。