日本最西端の路線バス、馬にはばまれるスローな運行 最西端のバス停は「らしくない」?

日本最西端の島、沖縄県の与那国島で運行されている路線バスは、牧場地帯で馬の道路通過をひたすら待つなど、車窓や車内にのんびりとした光景が広がります。もちろん、「日本最西端のバス停」にも停まります。

バスのすぐ近くに馬 運行も「馬優先」

 日本の最西端に位置する沖縄県の与那国島では、与那国町が「与那国島生活路線バス」を運営しています。運行は民間のバス会社に委託されているのですが、その会社名はズバリ「最西端観光」、もちろん日本最西端の路線バスです。

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与那国馬の牧場内を走る「与那国島生活路線バス」(2017年9月、宮武和多哉撮影)。

 バスは島のほぼ西半分を1周する形で1日9便運行され、おおむね50分かけ、おもな集落と空港を結んでいます。このうち、島の南部に位置する比川地区を経由する便は、牧場のなかを通過します。海面から数mの高台に位置し、与那国岳を山側に望む牧草地のなか、町の天然記念物である与那国馬を車窓からすぐそばで見ることができます。

 この周辺では、車両よりも「馬優先」です。与那国馬の群れが食事の際に道路を横切ることがあるのですが、その際はバスもトラクターも自衛隊車両も、すべてが停車して馬のゆくえを見守ります。与那国馬は全長110cmから120cmと小柄で大人しいものの、武骨な筋肉の盛り上がりと美しい毛並みは、車窓からでも十分に見て取れるほどです。運転手の方によると、馬が相手では仕方なく、バスが遅れることもよくあるといいます。

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与那国馬の群れが道路を横断したため、バスは数分停車した(2017年9月、宮武和多哉撮影)。
島南部の比川地区に残る『Dr.コトー診療所』のメインセット。劇中では「志木那島診療所」として登場(2017年9月、宮武和多哉撮影)。
「与那国島生活路線バス」。長らくマイクロバスで運行されていたが、現在は小型路線バス車両となっている(2017年9月、宮武和多哉撮影)。

 また、この比川地区は2003(平成15)年からフジテレビ系列で放送されたドラマ『Dr.コトー診療所』のオープニング映像が撮影された場所です。海をバックに、吉岡秀隆さんが自転車を立ち漕ぎして坂を上る映像が代表的なシーンですが、「コトー先生」になりきるため、レンタサイクルを借りてこの場所を訪れる人も多いそうです。ただ与那国島は全体的に起伏が多く、到着するまでに体力を消耗してしまう人も多いのだとか。

 バス通りからは外れますが、比川地区の狭い住宅街を抜けた先に、『Dr.コトー診療所』のメインセット(志木那島診療所)が残されています。住宅街の路地には沖縄独特の赤い瓦を使った民家が続き、足元には魔除けの石標「石敢當(いしがんどう)」が多く見られます。この付近の道路は、人だけでなくカニもよく横切るため、蹴飛ばさないように注意が必要です。

【写真】海から望む「日本最西端」

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