日本最西端の路線バス、馬にはばまれるスローな運行 最西端のバス停は「らしくない」?

「日本最西端のバス停」、その姿は?

「日本最西端のバス路線」には、当然ながら「日本最西端のバス停」も存在します。島の西部に位置する久部良(くぶら)地区の久部良バス停です。

 久部良地区には岸壁があり、週2回、ここと石垣島とを結ぶフェリーが発着する際には大変な混雑ぶりを見せます。しかし、バス停はここから少し離れた漁協(漁業共同組合)の建物の近くにあり、フェリーとバスも接続をとっていません。フェリーからバスに乗り継ごうとすると、1時間以上は待つことになります。漁協の食堂で、ゆっくり刺身定食でも食べながら待つのがよいでしょう。

 日本最西端の久部良バス停、その姿は意外と素っ気ないものです。バス停によくあるポールに丸看板というスタイルではなく、2本の角棒に支えられた戸板に紙が貼り付けられただけで、「日本最西端」の表記などもありません。むしろ、その真後ろにあるカジキマグロ(与那国島の名物)の石像のほうが目立っています。

 ちなみに久部良の岸壁から1kmほどのところに「日本最西端の地」の碑がありますが、バスはここを経由しません。ただし、2019年4月30日にはここが「平成最後の夕日が沈む場所」として注目され、送迎バスが運行されたそうです。

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日本最西端のバス停である久部良バス停(2017年9月、宮武和多哉撮影)。
島北部に位置する祖納(そのう)地区の祖納バス停。多くの便がここを起終点とする(2017年9月、宮武和多哉撮影)。
与那国空港に残る旧ヨナグニ交通時代のバス停(2017年9月、宮武和多哉撮影)。

 この「与那国島生活路線バス」は、2007(平成19)年にヨナグニ交通が運行から撤退し、与那国町に引き継がれて誕生しました。現在でも与那国空港には、ヨナグニ交通時代のバス停跡が残っています。運賃無料となった「与那国島生活路線バス」は、厳密には道路運送法に基づく一般路線バスではありません。道路運送法に基づくに路線バスとしての最西端バス停は、与那国島の東、西表島で運行する西表島交通の白浜バス停です。

 2018年には、与那国町が新しい取り組みとして、AI(人工知能)を活用した配車システムを用いた「AI運行バス」の実証実験を「与那国島生活路線バス」とほぼ同じルートにおいて行いました。また、同年には従来の路線バスにも新車が導入されたほか、2019年のダイヤ改正では比川地区への増便や新規バス停の設置なども実施されています。新しい動きもある「日本最西端の路線バス」、いちど訪れてみてはいかがでしょうか。

【了】

【写真】海から望む「日本最西端」

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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