ヨルダン装甲車、実は試供品? 61式戦車と「友好の証」 五輪見すえ日ヨ防衛協力進むか

「最新装備寄贈」の背景に何がある?

 ヨルダンが日本へ最新鋭の「アル・サター」を寄贈したのは、ヨルダンが日本に対して、特殊部隊用防衛装備品の売り込みを図りたいという思惑もあるのではないかと筆者は思います。

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2017年2月にUAEで開催された防衛装備展示会「IDEX2017」に、KADDBが出展した特殊部隊用装甲車(竹内 修撮影)。

 日本とヨルダンは2016年10月に、防衛協力と交流を進めるための覚書に署名しており、2018年11月27日にはアブドッラー国王が安倍晋三首相と共に、陸上自衛隊の習志野演習場地区を訪問し、同隊の特殊作戦群から活動内容の説明を受けると共に、その訓練展示の視察を行っています。

 ヨルダン陸軍の特殊部隊司令官も務めたアブドッラー国王の目に、陸上自衛隊の特殊作戦群がどう映ったのかは定かではありませんが、対テロ戦を行う上で特殊作戦群は「アル・サター」のような装備品を持つことが望ましいという、元ヨルダン陸軍特殊部隊司令官の視点と、「アル・サター」のような商品であれば、特殊作戦群に対するビジネスチャンスがあるのではないかという、一国を切り盛りする者としての視点から、今回の寄贈を決めたのではないかと筆者は推測しています。

 防衛省と外務省は、受領した「アル・サター」をどうするのかを明らかにしていませんが、恐らく特殊作戦群で試験運用されるのではないかと筆者は思います。

 来年、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの治安対策を大きなビジネスチャンスと捉えて、陸上自衛隊の特殊作戦群や警察特殊部隊の「SAT」(特殊急襲部隊)などに対する、対テロ用装備品の外国からのセールスは活発化しています。

 特殊作戦群やSATは、任務の性質から他国の特殊部隊での使用実績がある装備品を積極的に導入しています。今回、ヨルダンから「アル・サター」が寄贈されたことは、単に日本との友好関係強化の証というだけではなく、自国の得意とする特殊部隊用装備品を日本に売り込みたいという、現実的な側面もあると見るべきだと筆者は思います。

【了】

【写真】ヨルダン国王肝煎りの「KADDB」内部の様子

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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