半ば国王の趣味! 陸自61式戦車がヨルダンへ 退役済みながら日本戦車初の中東派遣
すでに退役している陸上自衛隊の61式戦車が、ヨルダンの戦車博物館へ貸与という形で贈られました。防衛装備庁によると「両国の友好の証」とのことですが、実はヨルダン国王の個人的趣味という側面も大いにあると見られます。
日本戦車初の中東派遣、行先は「博物館」
2019年8月6日(火)早朝、横浜の大黒ふ頭へ、陸上自衛隊の車両に先導された大型のトレーラーが到着しました。荷台に積まれていたのは、静岡県の陸上自衛隊滝ケ原駐屯地に展示されていた「61式戦車」です。この戦車は戦後10年目となる1955(昭和30)年に開発が開始され、1961(昭和36)年に採用された戦後初の国産戦車ですが、2000(平成12)年には全車が退役しています。しかしここにきて新たな任務を付与され、海外へ派遣されることになったのです。
行き先は中東のヨルダン王国にある「王立戦車博物館」です。9月8日か9日には、同国のアカバ港に到着する予定といいます。中東に日本戦車が派遣されるのは、戦前戦後を含めて初めてのこと。世界各国の戦車と並んで展示され、日本戦車の代表として「広報任務」を果たすことになるのです。
ことの起こりは2018年4月、日本の河野外務大臣がヨルダンを訪問し、同国のアブドッラー2世・イブン・アル・フセイン国王に拝謁した際に、日本の古い戦車を供与してほしいとの要請があったことです。日本はこれまで、展示用も含め戦車を輸出したことなどありません。外務省、防衛省、首相官邸ではこの要請に対し、ひと騒動あったようです。
結局、中東の親日国であるヨルダン国王のたっての願いであり外交上もメリットが大きいということで、退役した61式戦車を「貸与」という形で送ることにしました。形式上、所有権は日本が留保しています。主砲砲口が埋められており、エンジンも取り外された状態で動くことはできませんが、展示にふさわしいよう綺麗に再塗装されています。
ヨルダンはイスラエル、パレスチナ暫定自治区、サウジアラビア、イラク、シリアと国境を接していますが、アラブ穏健派と見なされており、西側欧米諸国とも深い関係を保っていて、イスラエルとも国交を結んでいます。日本とは1954(昭和29)年以来の国交が続いていて、現在のアブドッラー国王は即位前も含め、12回の訪日歴を有する親日家です。また同国においては、日本アニメ、マンガが若者を中心に絶大な人気があるほか、武道、日本食、伝統芸能を中心に日本文化への関心が高いといわれています。
61式かの地にて永く戦えり