空母甲板の障害物「艦橋」どこに置くのが一番よい? 試行錯誤の結論が「右舷」のワケ

一方アメリカは少し「上」を行っていた、高さ的な意味で

 一方アメリカ空母の艦橋と煙突は、たとえば「レキシントン」に見られるように、大きく直立し右舷側に縦に並べられています。「赤城」は排煙熱を舷外下方に流そうとしているのに対して、「レキシントン」は艦載機の着艦高度よりも高い位置に排出しようという発想でした。日本とは違った発想ですが、後に日本海軍でもこの形状が空母「隼鷹」「飛鷹」で採用され、現代でも多く使われている形式となります。

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アメリカ海軍の空母「レキシントン」日本空母とは対照的巨大な直立煙突が目立つ(画像:アメリカ海軍)。

 ところで、準同型艦だった「赤城」と「加賀」の左右別舷艦橋は、意外な利点もあったようです。

 航空機にとって空母はとても小さいもので、上空から識別できず、着艦すべき母艦を間違えるということがまま起こりました。たとえば1942(昭和17)年5月7日の珊瑚海海戦では日没直後に、九九式艦爆隊が間違って敵空母「ヨークタウン」と「レキシントン」に着艦しようとする珍事まで起こるくらいなのです。ちなみにこのとき、アメリカ空母側も着艦許可を出していたという、不注意が過ぎる謎の事件です。そのため、同型艦のある空母は識別用に飛行甲板へ、「赤城」なら「ア」、「加賀」なら「カ」と大書きしましたが、艦橋位置が左右で違っていれば、上空からでも準同型艦であろうがすぐに識別が可能です。

 また両艦は戦隊を編成することが多かったのですが、発行信号や手旗で連絡し合う際にも、「赤城」が右、「加賀」が左に並べばやりやすかったとの話もあります。もっとも海上では、接近するといっても数百メートルは離れており、左右舷の位置の違いの影響がどれほどであったのか、同じように左右別舷艦橋だった「飛龍」と「蒼龍」では同じような話は残っていませんので、真偽は定かではありません。

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