空母甲板の障害物「艦橋」どこに置くのが一番よい? 試行錯誤の結論が「右舷」のワケ
戦前からこのかた、世界的に見ても空母甲板上の艦橋は右舷にあり、例外は旧日本海軍の「赤城」と「飛龍」くらいですが、これはなぜでしょうか。そこにはもちろん、空母黎明期からの試行錯誤と、その末に見出した理由があります。
飛行機がなぜか左側に行きたがる、そのワケ
太平洋戦争当時の艦載機は基本、機体正面中央にレシプロエンジンをひとつ搭載した単発機で、プロペラは(コックピットから見て)右回転します。よって単発機は左方向へのトルクが掛かるため、左ロールの方がやり易いのです。記者(月刊PANZER編集部)は趣味でラジコン機を飛ばしていますが、圧倒的に左ロールの方が制御しやすいのが感覚で分かります。ベテランに教えてもらいながら「練度を上げるため」右ロール、複雑な8文字旋回の練習項目があるくらいなのです。
プロペラ機ではなくジェット機なら、このトルクの問題は無いように思いますが、パイロットは操縦桿を右手で扱う右利きが多く、いざというときには内側に引きやすいため、やはり左ロールの方がやりやすいようです。
このように、飛行機は左側に行きたがる傾向があるのです。パイロット視点ではとても狭い飛行甲板に発着するシビアな操作が要求されるとき、左側の視野に障害物が入るのは、感覚的にはとてもプレッシャーになります。左舷に艦橋のある「赤城」や「飛龍」に配属されるのを露骨に嫌がるパイロットも居たようです。こうした声から、「飛龍」の後継である空母「翔鶴」以降は艦橋が右舷に統一されます。
黎明期には空母「龍驤」のように、そもそも甲板上に艦橋のない空母もありましたが、ともあれこうした経緯を経て、こんにちでは空母の艦橋は甲板の右舷側に置かれているのです。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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