ベトナム軍、米製兵器へ転換進むか 最新輸送機に無人機、台湾に続きF-16V戦闘機も…?

やはり敵の敵は味方

 かつて激しく戦ったアメリカの開発した戦闘機が、ベトナム人民空軍の新戦闘機の有力候補となっている背景には、中国の存在があります。

 現在のベトナム社会主義共和国の前身であるベトナム民主共和国は、中国と良好な関係を築き、ベトナム戦争でも中国から軍事的な支援を受けましたが、統一後の1979(昭和54)年に親ベトナム政権を樹立するためカンボジアに侵攻したことで、カンボジアの対立勢力を支持していた中国との関係が悪化。同年2月に武力衝突(中越戦争)が発生しています。

 近年、中国は人工島を建設するなど、南シナ海にて南沙諸島の領有化を進めていますが、南沙諸島の領有権を主張しているベトナムは中国に対して神経を尖らせています。このためベトナムは、中国の力による現状変更を認めない、かつての宿敵であるアメリカと軍事的な結びつきを強めており、2018年3月にはアメリカ海軍の原子力空母「カール・ビンソン」がベトナムのカムラン湾に寄航しています。

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ベトナムへ6機が輸出される「スキャンイーグル」(竹内 修撮影)。

 アメリカとベトナムの軍事的な結びつきは防衛装備品にも及んでおり、アメリカ政府は2019年6月に、ボーイングの子会社であるインシツが製造している偵察用UAV(無人航空機)「スキャンイーグル」6機の売却を決定しています。

 またベトナム空軍は、アメリカのテキストロン・アビエーションが開発したターボプロップ練習機T-6「テキサンII」の導入を希望しており、アメリカ政府も前向きな姿勢を示していることから、F-16Vがベトナムに提案される可能性は高く、将来的にはベトナムのアメリカ製防衛装備品の導入は増えるのではないかと、筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。

【写真】ベトナム人民空軍仕様MiG-21

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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