上野公園の地下に眠る「博物館動物園駅」 その数奇な運命とは? 駅舎内で作品展も

数奇な運命をたどって閉鎖された駅が、期間限定で公開中

 太平洋戦争中、数奇な運命はさらに重くのしかかってきます。京成上野~日暮里間は当時、地下鉄銀座線以外では東京で一番長い地下区間でした。すでに空襲が激化していた1945(昭和20)年6月、同区間は国に接収されてしまいます。

 その“元京成の線路”は国鉄と同じ線路幅に改軌され、国鉄日暮里駅付近から繋がれた線路より、国鉄の1・2等寝台、1等客車などがトンネル内の博物館動物園駅方面へ送りこまれました。車両を軍の作戦本部にするためだと言われています。同駅のホームや通路には軍用物資が置かれ、簡易地下工場も地下に造られました。

 終戦後、同区間は旅客扱いを再開。博物館動物園駅も再開業となりましたが、4両編成の電車しか停まれないこともあり、6両編成の普通電車が走り出すと通過駅となってしまいました。利用客は減少し廃止となったわけです。

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博物館動物園駅のもうひとつの出入口(動物園口)。現在は閉ざされている(2019年10月17日、内田宗治撮影)。

 今回の駅舎内部公開では、ホームまでは入れませんが、相対式2面2線のホームは現存しています。また同駅の地上出入口は、今回公開の駅舎のほか、京成上野駅寄りに「動物園口」と呼ばれていたものがもうひとつあり、閉鎖された形で残っています。

 現在、駅舎内で開催中の作品展「想起の力で未来を:メタル・サイレンス2019」も興味深いものです。

 かつての地下切符売り場付近では、スペイン出身の作家、クリスティーナ・ルカスによる3面映像インスタレーションの大作『終わりえぬ閃光』(全6時間)の上映、入口付近のドーム型屋根の下ではフェルナンド・サンチェス・カスティーリョによる彫刻が展示されています。

『終わりえぬ閃光』は、世界初の空爆が行われた1911(明治44)年から太平洋戦争での東京空襲や原爆投下、そして2019年まで、世界中での空爆に対して、すべての年、すべての場所が地図と写真で次々と示されるのが圧巻です。惨禍を示す映像の途中、電車がゴーゴーと下を通り過ぎると、まるで地の底から聞こえてくるように感じられます。

 博物館動物園駅は、2019年11月17日までの金土日曜・祝日、10時から17時まで、期間限定で公開中です(入場無料)。

【了】

※誤字を修正しました(11月4日9時00分)。

【写真】廃止時の姿のまま残る、博物館動物園駅の切符売り場

Writer: 内田宗治(フリーライター)

フリーライター。地形散歩ライター。実業之日本社で旅行ガイドシリーズの編集長などを経てフリーに。散歩、鉄道、インバウンド、自然災害などのテーマで主に執筆。著書に『関東大震災と鉄道』(ちくま文庫)、『地形で解ける!東京の街の秘密50』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)』ほか多数。

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コメント

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6件のコメント

  1. 動物館になってます

    • 誤り訂正様

      平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。乗りものニュース編集部です。
      このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。修正いたしました。
      これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

    • タグが動物館のままです。確認を

    • 誤り訂正様

      平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。乗りものニュース編集部です。
      度重なるご指摘をいただき、誠にありがとうございます。
      タグのほうも修正いたしました。
      これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

  2. その名は「博物館動物館」駅。
    出だし1行目からメインの名前が間違っていませんか!??

    • 匿名希望様

      平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。乗りものニュース編集部です。
      このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。修正いたしました。
      これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。