旧ソ連の秘密兵器「ロケット戦車」を知っているか?「未来の戦車」として誕生するが…
冷戦時代のソ連といえば秘密のベールに包まれた国で、噂のみ伝わっていた秘密兵器が数十年後、西側諸国にようやく明らかになることがままありました。「ロケット戦車」もそのひとつ。作られた背景には、当時のお国柄が透けて見えます。
ソ連が崩壊するまで存在が知られていなかった秘密兵器
戦車は背の低い方が敵から見つかりにくくなりますが、その低さの限界に挑戦したような戦車が、かつてソ連で作られました。それが「オブイェークト775」です。上から押し潰したような冗談みたいな外見ですが、大真面目にソ連が研究開発していた戦車です。このずいぶんと変わった形の戦車はどんな戦車だったのでしょう。
「オブイェークト775」は1991(平成3)年にソ連が崩壊するまで存在が知られていなかった、ソ連の秘密兵器「ロケット戦車」のひとつです。ロケット戦車といってもロケットエンジンで走るわけではなく、対戦車ミサイルで武装した戦車のことをいいます。ロシア語ではミサイルもロケットも同じ「ラケータ」と呼んでおり、ミサイル戦車をロシア語にすると「ラケータ ヌイ タンク」となるわけです。
ロケット戦車は、1960年代に流行した「ミサイル万能論」に則って開発されました。当時は誘導ミサイルの発達が顕著で、従来の大砲から主役交代するという「ミサイル万能論」が流行していたのです。
このミサイル万能論を信奉していたのが当時のソ連最高指導者、ニキータ・フルシチョフでした。軍や研究者は、自らの保身と予算を回してもらうという政治的意向が強く作用して、こぞって陸海空の兵器にミサイルを取り入れようとします。
戦車も、大砲はもう時代遅れとされ、これから未来はミサイルの時代というわけで「ロケット戦車」が着想されました。アイデアはいくつか生まれますが、外見的にも「オブイェークト775」は異彩を放ちます。かなり斬新な形ですが未来的に見えたのでしょうか、1964(昭和39)年に、実際に試作車が作られてしまいました。
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