旧ソ連の秘密兵器「ロケット戦車」を知っているか?「未来の戦車」として誕生するが…
政権交代とともに消えた…わけではないロケット戦車
ミサイル万能論の信奉者だったフルシチョフが1964(昭和39)年に失脚すると、ロケット戦車の研究も下火になっていきます。何とか実用化できたのは、オーソドックスに当時の主力戦車であるT-62の車体を使ったIT-1でしたが、生産数は約200両と少なく、2個ロケット戦車大隊が編成されただけでした。ミサイルは決して万能ではなく、政権に忖度して保身の為に開発を続ける必要は無くなったのです。
西側諸国のあいだでは、ロケット戦車は噂レベルでしか知られていない秘密兵器で、前述のようにオブイェークト775など実車の存在が確認されたのは1991(平成3)年の、ソ連崩壊後のことでした。
ソ連、ロシアのすごい所は、こんなアイデア倒れの使えなかった戦車も廃棄せず、ちゃんと維持保管されていることです。首都モスクワ郊外のクビンカ戦車博物館には、世界各国の失敗作から傑作、成功作まで数多くの戦車が収蔵されていますが、「オブイェークト775」も21世紀の「未来」まで生き残り、後世の我々を「楽しませ」「学ばせる」という任務を遂行しています。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
sine