WW2期のアメリカ大量生産で登場「リバティ船」溶接と造船に革新と教訓 もたらしていた

謎の破損事故が頻発するリバティ船 潜水艦の仕業かと思いきや…

 当初は潜水艦の仕業とも疑われたようですが、ほかの船にも溶接面に亀裂が生じている報告がもたらされており、原因が溶接した鋼板にあることは、戦中からなんとなくは分かっていたようです。なお、戦時中に船体の損壊事故を起こしたリバティ船は全体の約4分の1といわれており、かなり深刻だったことがうかがえます。

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1942年7月15日撮影、リバティ船「ジョージ・ゲール」の進水式(画像:アメリカ海軍)。

 正式に謎が究明されたのは、1946(昭和21)年7月で、原因は鋼材の溶接性の不良にあるとされました。見た目では完全に接合されているように見えても、不純物のせいで細かな亀裂が発生しており、低温になると溶接の継手(つぎて。結合部のこと)部分が、突然パキッっと折れてしまう現象「脆性破壊(ぜいせいはかい)」が生じやすいという結果が出たからです。

 この事件をきっかけに、溶接用鋼材の見直しや、溶接継手位置の設定、溶接順序の設定、溶接法の見直しなど様々なルール作りが行われました。そして、このときに確立した方法というのは、2019年現在でも溶接施工の基礎となっており、造船以外の分野でも役立っています。

 このリバティ船にまつわることの顛末は、現在でも工業・工学系の学校に入ると、技術発展における重要な教訓のひとつとして学ぶこともあるほどです。ある意味、戦時中という非常事態だからできた、壮大な実験ともいえますね。

【了】

【写真】狭い! リバティ船内の軍隊用5段ベッド

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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