ハイジャックに「営業時間外」で対応できず スイス空軍 どうしてそうなった?
立て直し図るスイス空軍と「民意」
スイスはそののち「航空警察24時計画(LP24)」として、F/A-18「ホーネット」戦闘機2機による15分以内緊急発進待機24時間化、週7日化を進めます。
このまま防空体制の見直しが進展するかと思いきや、ハイジャック事件から3か月後の5月18日、今度は旧式化したF-5E/F「タイガーII」戦闘機の後継となる次期戦闘機「グリペンE」22機の導入を問う国民投票において、有効投票数のうち賛成票(46.59%)に対し反対票(53.41%)が上回るという事態が発生します。
スイスは一定以上の署名を集めた議題について、国民投票でその是非を問う直接民主制を採用しています。国民投票の結果には法的拘束力があるため、グリペンEの導入は民意を反映し中止となりました。
スイスは周辺国の全てが「西側諸国」であり、国境においても出入国審査さえありません。かつての冷戦時代のような、外国(おもに共産圏)の侵略に抵抗するための「武装中立を国是とする強固な軍事国家」である必要がなくなっています。つまり外敵が無いため、いま新しい戦闘機を調達する必要はないと、多くのスイス国民が考えたのです。
また「平和な牧歌的風景」のイメージを売りとするスイスにおける、騒音公害発生源たる戦闘機への嫌悪は根強く、2008(平成20)年には「観光エリア(事実上ほぼ全土にわたる)の戦闘機飛行禁止」が国民投票にかけられました。さすがにこれは反対票68.08%(有効投票)で否決されているものの、それでも賛成票31.92%を集めています。
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