ハイジャックに「営業時間外」で対応できず スイス空軍 どうしてそうなった?

WW2では連合国、枢軸国問わず、領空侵犯機に対して攻撃や撃墜もいとわなかった武装中立国スイスですが、21世紀のいま、特に空軍の凋落には著しいものがあり、ハイジャック事件にも対応できませんでした。現状とその背景を解説します。

立て直し図るスイス空軍と「民意」

 スイスはそののち「航空警察24時計画(LP24)」として、F/A-18「ホーネット」戦闘機2機による15分以内緊急発進待機24時間化、週7日化を進めます。

 このまま防空体制の見直しが進展するかと思いきや、ハイジャック事件から3か月後の5月18日、今度は旧式化したF-5E/F「タイガーII」戦闘機の後継となる次期戦闘機「グリペンE」22機の導入を問う国民投票において、有効投票数のうち賛成票(46.59%)に対し反対票(53.41%)が上回るという事態が発生します。

 スイスは一定以上の署名を集めた議題について、国民投票でその是非を問う直接民主制を採用しています。国民投票の結果には法的拘束力があるため、グリペンEの導入は民意を反映し中止となりました。

 スイスは周辺国の全てが「西側諸国」であり、国境においても出入国審査さえありません。かつての冷戦時代のような、外国(おもに共産圏)の侵略に抵抗するための「武装中立を国是とする強固な軍事国家」である必要がなくなっています。つまり外敵が無いため、いま新しい戦闘機を調達する必要はないと、多くのスイス国民が考えたのです。

 また「平和な牧歌的風景」のイメージを売りとするスイスにおける、騒音公害発生源たる戦闘機への嫌悪は根強く、2008(平成20)年には「観光エリア(事実上ほぼ全土にわたる)の戦闘機飛行禁止」が国民投票にかけられました。さすがにこれは反対票68.08%(有効投票)で否決されているものの、それでも賛成票31.92%を集めています。

【写真】操縦士はパートタイマー スイス空軍のアクロバットチーム

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